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モス・和牛バーガー、堀江貴文氏「痩せた経産牛を買い叩い」と批判→異論も

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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モスバーガーのHPより

 大手ハンバーガーチェーン・モスバーガーが11月15日から期間限定で販売している「一頭買い 黒毛和牛バーガー シャリアピンソース~トリュフ風味~」(860円/税込/以下同)について、実業家の堀江貴文氏がX(旧Twitter)上に

<また性懲りも無く痩せ細った経産牛を買い叩いて和牛として売ってる、、、いい加減,世界一の評価をもらってる黒毛和牛のブランド価値を落とす安売りはやめませんか?790円って、たったの5.24ドルだよ。。>

と投稿し批判。堀江氏は昨年にモスバーガーが「一頭買い 黒毛和牛バーガー ~特製テリヤキソース~」(690円)を発売した際にもYouTube上で、自身も和牛生産関連の業界にかかわっているとして、

<日本の黒毛和牛を高く売ろうとしている人たちからすれば、その安い値段はなんなんだ>

<(生産者から)かなりダンピングして買ってるに違いない>

<廃業しちゃった飼育農家さんから、痩せこけた肉を買ったんじゃないか>

<安くかき集めてダンピングした牛を、ミンチにして出す>

<和牛全体のブランディングにしたら、本当に困った。やめてほしい>

<米ドルにしたら、たったの5ドルで世界最高峰の和牛を食わせるって、バカじゃないの? シャンパン5ドルで売ってますか? そういうことですよ>

<生産者さん、モスバーガーの従業員さん、みんな給料増えないよ>

と自説を展開していた。果たしてモスバーガーの行為は、和牛生産にかかわる業界や飲食業界に悪い影響をおよぼすのか。業界関係者の見解を交え追ってみたい。

 モスバーガーは11月15日〜来年2月中旬まで「一頭買い 黒毛和牛バーガー」2種を期間限定で販売する。今回の「シャリアピンソース」は第1弾で、来年1月5日から第2弾として「一頭買い 黒毛和牛バーガー 特製テリヤキソース~ゆず胡椒風味~」(790円)を販売する。使用されるパティはモスが一頭買いした経産牛を使用しており、「通常のパティでは使用していない“サーロイン”や“ヒレ”などの高級部位、一頭の和牛から少量しか取れない希少部位も含めた全19部位を、余すことなく使用」(モスバーガーのプレスリリースより)しているという。

 一般的に日本で価値が高いとされる牛肉は、雄牛や未経産牛の霜降り肉などサシが多いものだが、出産を経験した経産牛は赤身肉が特徴。以前は硬くて肉質が劣るとされ肥料やペットフードに加工されたり廃棄されていたが、近年では出産の役割を終えた経産牛を再肥育して出荷する動きが広まっている。価格も高級肉とされるものより安価で、かつ味についても『旨味が凝縮されている』という評価も広まり、高級レストランなどで提供される機会も増えつつある。ちなみに欧州では熟成された赤身肉が主流で、フランスのレストランなどで広く使われているシャロレー牛も未経産牛だ。霜降り肉が価値が高いとされる日本とは事情が大きく異なる。

 近年では政府も農水産物の海外戦略で牛肉の輸出拡大を重視している。日本の農林水産物の品目別輸出額(2022年)をみてみると、ホタテ貝が910億円で1位で、牛肉はそれに次ぐ2位で520億円。政府は牛肉の輸出を25年までに年1600億円にする目標を掲げている。堀江氏は前出YouTube動画内で

<和牛というのは世界のなかでも一番おいしいといわれている。牛肉のなかでもピラミッドの頂点にあるようなトップ2~3%>

と語っているが、大手外食チェーン関係者はいう。

「もともと欧米では赤身の熟成肉が好まれ、脂が多い霜降り肉は敬遠されてきた。日本の和牛が『世界で一番おいしいといわれている』のかはわからないが、ここ数年は海外でも『WAGYU』人気が高まりつつあるのは事実。ただ、安価なアメリカ産やオーストラリア産の『WAGYU』のシェアが高く、高価な日本産和牛は厳しい競争を強いられているのが実情であり、ブランド価値を高めて海外で高く売ろうとする動きは重要だ」

消費者にメリットも

 堀江氏は前出YouTube動画内で、モスバーガーが生産業者から「かなりダンピングして買ってる」と指摘している。昨年にモスバーガーが「一頭買い 黒毛和牛バーガー ~特製テリヤキソース~」を販売した際のデータを参考として試算してみよう。このときモスバーガーは和牛350頭を一頭買いし、「和牛バーガー」1個あたり690円、計100万食の限定販売というかたちをとっていた。原価率を一般的な飲食店の原価率である3割と仮定した場合、100万食の総計原価は

・690円×100万食×30%=2億700万円

となり、仮に原価が全額、和牛分だとすると、和牛1頭当たりの仕入れ価格は

 ・2億700万円÷350頭=約59万円

となる。原価には牛肉以外も含まれるため、和牛の仕入れ価格はこれより下がると考えられる。では、堀江氏のいうようにモスバーガーの「和牛バーガー安売り」は、日本の食産業発展にとって悪い影響をおよぼすことなのだろうか。

「まず、『経産牛を和牛として売ってる』という言い方だが、黒毛和牛の経産牛を『和牛』と表記して販売することは、当然ながら何の問題もない。『痩せ細った経産牛』という言い方も、そもそも経産牛は赤身肉がウリなので、なぜマイナスの表現をしているのか腑に落ちない。また、本当に『安売り』なのかという点だが、スーパーでは黒毛和牛のA4等級クラスのうす切り肉が100gあたり500~600円台で売られており、取引価格が安い経産牛を大量に一頭買いしていることを考慮すれば、和牛バーガーが800~900円ほどというのは妥当な価格なのではないか。

 これまで経産牛は『肉質が悪い』として廃棄されたり肥料に加工されていたもので、その廃棄・加工コストを考えれば、生産者側としては再肥育することによって一定の金額で買い取ってくれるとなれば、収入的にもメリットは大きいだろう。また農産物の廃棄ロスと無駄のない活用という観点でも評価されるべきでは」(前出・大手外食チェーン関係者)

モスバーガー「黒毛和牛バーガーモス」の860円は相応の価格

 自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「経産牛は出産回数が多くなるほど価格と味が落ちるといわれていますので、食肉としては肉の硬さから敬遠されがちです。多くは廃用牛としてミンチやペットフード、肥料に加工されたり、廃棄されることもあるので、飲食業界ではあまり評価されてきませんでした。街場のお店では使っていないだけでなく、仕入れるということを思いつきもしなかった店も多いのでないでしょうか。ただし、知らないうちにスーパーの安い切り落としを購入して使用している可能性はあります。

 経産牛は脂肪が少ない点が商品のウリともいえなくはありませんが、部位にもよりますが、硬いというのは食材としては致命傷であり、そのまま焼くだけではより硬くなりますし、長時間煮込んで柔らかくしても脂が少ないとパサパサ、ボロボロになりますから、商品としては使いづらいものです。そんな扱いづらい経産牛ですから、もし仕入れるとしても一般的には仕入れ価格は安くなります。

 和牛1頭の価格はブランド、産地、雄雌、相場など各種要因によって変わりますので一概にいくらと言いにくいのですが、ざっくりとした相場価格としては和牛1頭約700キロ(食用部分約400キロ)で180万円前後からだと思います。ブランド牛になると1頭500万円前後くらいでしょう。これに対して経産牛は1頭30万~50万円といわれていますので、モスバーガーのように大量に購入することでさらに仕入れ価格を下げ、販売価格も抑えることが可能となります。

 私の考えとしては、捨てられていたものを、うまく活用したり、調理方法によって、できるだけおいしく安く提供する努力や方向性は素晴らしいと思っています。『ほおるもん=捨てるもの』として扱われていたホルモンは今では人気ですし、昔はマグロの頭や尾は市場の片隅で安く売られたりしていましたが、こちらも最近では人気があります。形やサイズが規格外ということで廃棄されていた野菜は徐々に注目され活用されるようになっています。これらの方向性には賛成です。

 もし問題があるとしたら誤認的な部分ではないでしょうか。商売上『安く見せて売る』という戦略は大事なのですが、必要以上に高級そうに見せて売り、実際に食べてみたら残念だったとなると、その商品だけでなく比較される本当の高級品のほうも誤解されてしまうおそれがあります。

 今回のモスバーガーの商品はHP上で『希少部位まで贅沢に使ったパティ。ひとくち頬張るだけで、肉の歯応えやうまみに あなたもきっと感動するはず。モスでしか味わえない、プレミアムなバーガーをぜひお楽しみください』と謳われています。味の受け止め方は人それぞれですから、食べてみたときに『なるほど、その通り!』と思う人もいるかもしれませんが、本来の和牛のおいしさを知ってる人からすると、疑問を感じる人もいるのではないでしょうか。私も実食してみましたが、パティのパサつきは否めず、ベーコンとソースにうまく助けられているなといった印象を受けました。最近は味も見た目もワイルドでジューシーな1500円~2000円のアッパークラスのハンバーガーも人気がありますので、モスの860円は今の物価も考慮すると相応の価格かなとは思います。

 広告やキャッチコピーは大事ですが、あまり過大な表現は消費者の期待を裏切りかねませんし、本来の和牛のイメージを落としてしまうのではという懸念にも頷けます。あとは、消費者=食べた人がどう思うかの判断次第でしょう。経産牛といっても、大切な命であり、資源であり、大事に育てた酪農家さんがいますので、無駄なく、より価値あるものとして活かされることを期待したいものです」

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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