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理系の就職内定率、女子のほうが高く…理工系女子は就職困難との誤解広まる理由

文=LUIS FIELD、協力=安藤健/人材研究所シニアコンサルタント
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「gettyimages」より

 少し前、ある大学教授がSNS・X(旧Twitter)上に投稿した以下内容が話題を呼んでいた。

<「女子は理工系に進学すると就職できなくなる」は違います。うちでは今年就職する(進学しない)女子学生は全員就職決まってるし、昨年も第一志望に早期で決まりました。論理的思考、問題解決能力に優れていますし、チームで進める研究プロジェクトで協調性・リーダーシップが磨かれます>

 11月17日付「NHK NEWS WEB」記事によると、2024年春に卒業する予定の大学生の就職内定率は10月時点で男子大学生が73.9%、女子大学生が75.8%。女子大学生のほうが男子大学生を上回る結果となっている。また、マイナビキャリアリサーチLabが公開した10月中旬時点の就職内定率状況を見ていくと、文系では男子が86.0%、女子が83.0%と男子のほうが高いのに対し、理系では男子が86.8%、女子は91.2%と女子のほうが高くなっている。これらのデータを見る限り、「女性は理工系に進学すると就職できない」とはいえないことがわかる。そこで今回は、人材研究所シニアコンサルタントの安藤健氏に話を聞いた。

理工系の女性は就職に不利というのは、もはや過去の話

「理工系に進学すると就職に不利になるという認識は正しくありません。国が女性活躍推進法を定めているように、女性の雇用は社会的にも積極的に行われています。企業でも職場の多様性を視覚化するために、男女比や国籍の割合を数値化したダイバーシティレイトを用いるケースも目にします。例えば、あるIT企業は社内の男女比を5:5と設定し、その数値を達成するための採用戦略をとっています。具体的には70名の採用人数のうち、女性の割合を半分に設定しているのです」(安藤氏)

 国や企業も女性の雇用に力を入れているにもかかわらず、就職に不利という認識がいまだに見られるのはなぜなのだろうか。

「そのような認識が残っているのには2つ理由があると考えられます。1つには理工系の職種のなかには工具や機械を使用するものもあり、肉体的に男性のほうが耐えられるだろうという認識のもと、採用を行っていた企業があったという点。もう1つは学生の心理的な部分に関連します。女性の場合は特に職業選択をする場合、その職業に男性的イメージが強いと自己効力感が下がるという研究結果が報告されています。つまり男性的イメージが強い理工系職を、女性は心理的に敬遠する傾向があるということです。

 ただ、これらはいずれも過去のイメージから生まれているものです。むしろ企業側はそのような過去のイメージを払拭してでも、女性を採用しようと力を入れています。土木やデベロッパーという男性のイメージの強い会社が、CMで女性のアニメキャラを採用しているのもその一例です」(同)

理工系の女性を歓迎する動きも多い

 それでは実際の就職では理工系の女性が苦労したり、就職先が少なかったりすることは解消されてきているのだろうか。

「理工系の女性は人事の世界で『リケジョ』と呼ばれ、企業からはかなり歓迎されていると感じています。実際に、リケジョ専門の就職フェアや転職フェアも開催されています。一方で、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、21年時点の日本の高等教育機関の卒業・修了生に占める女性の割合は工学・製造・建築の分野で16%で、日本は加盟38カ国のなかで最下位であることがわかっています。この少ない理工系の女性を採用しようと企業はより力を入れているわけです。産休の仕組みに力を入れていたり、産休からの復帰率を公表したり企業も工夫をしています」(同)

 企業側が理工系の女性に対し、期待していることはどのようなものなのか。

「女性のほうがクリエイティブだとか感性が高いという話を耳にしますが、企業として女性特有のそういった能力を求めているということではないようです。組織を多様化して、いろいろな属性の人で構成することで創造性を高めたいというのが企業の考えなのでしょう。その一環として女性に着目しているということです。グローバルに活動する企業であれば、女性の雇用だけでなく国籍や人種という観点でも割合を設定しているケースも耳にします。ただ、女性の雇用を促進するには、産休の仕組みや産休後の職場復帰のフォローなどが必要となり、財務的に余裕がない企業では後手後手になってしまっている場合もあります」(同)

研究職や大学の教員の世界では男性が多い現状

 一方で、理工系の大学・大学院の教員や、企業の研究職では今でも男性が多いイメージだが、この道を希望する女性はどのようなことに注意をすればいいのだろうか。

「研究職となると、日々進歩する技術を常に追いかけていく必要があるため、キャリアのブランクが致命的になってしまうことが考えられます。キャリアのブランクが致命的なのは女性に限った話ではありませんが、出産といったライフイベントが男性よりも多いため、キャリアのブランクが発生しやすいのが現状でしょう。ダイバーシティに力を入れている民間企業などであれば、研究職でも道があるかもしれませんが、ダイバーシティに力を割けていない企業や大学の研究職は難しいのかもしれません」(同)

(文=LUIS FIELD、協力=安藤健/人材研究所シニアコンサルタント)

安藤健/人材研究所ディレクター

安藤健/人材研究所ディレクター

青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。2016年に人事・採用支援などを手掛ける「人材研究所」(東京・港)へ入社。2018年から現職。国内大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務や人事向けセミナーなどを手掛ける。毎月1回、組織・人事に関わる人のためのオンラインコミュニティー『人事心理塾』を企画・運営。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(ソシム)、『誰でも履修履歴と学び方から強みが見つかる あたらしい「自己分析」の教科書』(日本実業出版社)。
安藤 健 | 株式会社人材研究所

Twitter:@andoK_official

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