「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/8月2日号)は『親子で選ぶ大学』という特集を組んでいる。「志望校選びも本番。『地元』『資格』『安定』『理系』がトレンドだが、文系大学も負けてはいない。海外の大学へ進学という選択肢もある」と、大学の選び方にスポットを当てている。
特集では、おおまかに大学選びの近年の特徴を次のようにまとめている。
「この2、3年続いている『理高文低』傾向や『安全志向』は続くだろう。受験者の数は18年度までは緩やかな増減が繰り返されるが、15年度の受験者数は若干増える見込みだ」
「全体の受験者数が増加する中、文系受験者数の増加率以上に理系の受験者数が増加している」
「理系学部の中でも、医学部医学科の人気は依然として高い」
「保健衛生学系統や薬学系統は、対前年度で見ると大幅な志願者数の増加はなかったが、これはここ数年続いていた受験生の人気が『高止まり』したものと思われる。保健衛生学系統の中でも、医療技術や理学療法など専門的な職種が想起しやすい募集単位への人気は、私立大を中心に引き続いて高い」
理系人気を語る上で欠かせないのが、女子学生の存在だ。理系女子、いわゆる「リケジョ」が増加しており「15年度入試での理系志願者数は前年比でほぼ横ばいだが、女子の志望者は増加している」「かつては女子の多い理系学部といえば薬学や生物学だった。最近になって女子学生の増加が顕著なのは機械工学や電気電子工学、土木など、いかにも男子が多そうな分野。特に土木は女子には縁遠そうな分野だが、環境や都市計画などを学ぶので、女子の人気が高い」という。
文系は不人気傾向
人気学部の話題に戻れば、「語学系統や国際関係学系統は人気が高い。いわゆる『グローバル系』と呼ばれるところへの志望者数は増えている」。
しかし、一方で、不人気なのは「文系、中でも法学系統や経済・経営・商学系統はここ数年不人気傾向が続いている。私立大では志願者数の回復の兆しが見られるものの、人気が回復するまでには至っていない」のだ。
こうした傾向は「学部系統ごとの人気は、将来的な就職と密接な関係にあるようだ。学部学科名から、就職の行き先が浮かびやすかったり、社会のグローバル化などへの対応が想定しやすいところ、また特定の資格取得が可能な募集単位に多くの受験者が集まっているのが実情だ」
14年度に話題になったのは、インターネットでの出願だ。ネット出願は、大学側も受付後の処理が容易になり、受験生の記入ミスも減るというメリットがある。受験生にとっても、受験料割引や、複数学部の出願も容易になるなどのインセンティブがあり、応募者が急増した。特に応募者が急増したのは「近大エコ出願」と銘打った割引を行った近畿大学で、応募者が8000人増えて、出願者数日本一になった。関関同立(関西で難関とされる関西、関西学院、同志社、立命館の4大学)の一角に迫るほどに難易度と知名度が上昇し、「関西5強」を形成しつつあるという(以上、「東洋経済」より)。
グローバル化、または地域重視の二極化
一方、「週刊エコノミスト」(毎日新聞社/8月5日号)は『強い大学』という特集を組んでいる。「大学のオープンキャンパスが開かれ、受験生が志望校を固める夏休み。多くは偏差値を物差しにしがちだが、大学の評価は入学後の学習環境、卒業後の就職状況で大きく変わる。企業と同様に大学もグローバル競争にさらされる中、『強い大学』を選ぶ」と、こちらも大学選びにスポットを当てている。
「エコノミスト」によると、今後の大学の改革の方向は、グローバル人材か、地域人材育成に二極化していくという。
現在、英高等教育専門誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」において掲載されている『世界大学ランキング』で、100位以内に入ったのは東京大学(23位)と京都大学(52位)のみ。東大はアジアではトップだが、シンガポール大学(26位)、香港大学(43位)、ソウル大学(44位)、北京大学(45位)など有力大学に追い上げられている。
「下村博文・文部科学相は大学に競争を促し、世界に通用するグローバル人材の養成に向け国を挙げて支援すると訴える。文科省は、日本の大学の国際競争力を強化し、グローバル人材の養成機関にしようと、『スーパーグローバル大学創設支援』を今年度からスタートさせた」
一方、「地方の私立大でも介護や福祉、教育などに特化し、地元企業との連携を強めることで、高い就職率を上げる大学が目立つ。知名度や偏差値では、首都圏の有力大学には遠く及ばないものの、就職という実績では決して引けをとらない大学が地方にはたくさんある」という。
これからの大学はグローバル化か、地方重視か、旗幟を鮮明にして改革を進める必要がありそうだ。
(文=松井克明/CFP)