バラエティに富むさまざまな美味しい菓子が格安価格で販売されているとして人気の菓子製造・販売チェーン「シャトレーゼ」。同チェーンをめぐって、少し前に「シャトレーゼができたおかげで、近くにあったケーキ屋がすべて潰れた」というインターネット上の投稿が一部で話題となっていた。以前からシャトレーゼが出店すると付近の競合店の客数が減るという現象は指摘されていたが、なぜシャトレーゼは、それほど人気が高いのか。また、価格とクオリティーを勘案すると、コスパや価格妥当性はどう評価できるか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
国内外に合計約1000店舗を展開するシャトレーゼ。その特徴は、安くて美味しい菓子が豊富な種類取り揃えられているという点だ。たとえば人気商品の一つ「チョコバッキー」は64円(税込/以下同)、「ダブルシュークリーム」「うみたて卵のふんわり厚切りロール」は129円、「北海道産バターどらやき」は151円。専門店では小物ケーキが800円以上することも珍しくないなか、シャトレーゼでは「スペシャル苺ショート」「パリパリチョコショート」が356円、「ダブルチーズケーキ」が345円となっている。ケーキや洋菓子、和菓子、アイスといったスイーツ類のほか、パン、冷凍食品、ワイン、日本酒なども扱っている。創業は昭和29年(1954年)。現在ではケーキなど洋菓子のイメージが強いが、今川焼き風のお菓子を販売する店舗「甘太郎」が発祥で、昭和42年(1967年)に社名をシャトレーゼに変更。現在のFC(フランチャイズチェーン)システムによる店舗展開を始めたのは昭和50年(1975年)のことだ。
日本スイーツ協会認定スイーツコンシェルジュで『スイーツ男子はなとものI loveパンケーキ』(KADOKAWA)著者、はなとも氏は、シャトレーゼの商品の特徴について次のように解説する。
「価格帯としては300~400円台のものが多く、子どもから高齢の方まで幅広い年齢層の人々から美味しいと感じられる仕上がりになっており、『価格相応の美味しさ』といえます。逆にいうと、奇をてらった商品や尖った商品はなく、誰からも受け入れられる中間のところを狙った商品であるため、熱心なスイーツ好きの人などは『物足りなさ』を感じるかもしれません。
また、小物ケーキでいえば600円近くする『国産和栗のモンブラン』(594円)など高級感のある商品も提供しているほか、和菓子、おせんべい、アイス、ピザ、カレー、パンも揃っており、親子3世代のファミリーで訪問しても孫、親、祖父母全員のニーズを満たす商品構成となっているのもシャトレーゼの強みです」
住宅街や郊外などに数多く店舗
商品以外の点でのシャトレーゼの強みは何か。
「同業他社の『銀座コージーコーナー』が駅ビル・駅チカに数多く出店しているのとは対照的に、シャトレーゼは駅から離れた住宅街や郊外などに数多く店舗を出店しています。出店コストや賃料などを低く抑えることによって低価格を実現でき、駐車場を設けて車で来る客が多くなれば、客一人当たりの購入量も増えます。コロナのような人々の出勤頻度が大きく減る事態が起きても、客数への影響を軽微に抑えることができるでしょう」(はなとも氏)
最後に、はなとも氏にイチオシのシャトレーゼ商品を挙げてもらった。
「アイスの『チョコバッキー』です。チョコの量が非常に多くて“チョコ感”が強く、1本64円、6本入りが324円なので、スーパーで販売されているメーカー品と同等か、それよりも安い価格です。期間限定でフレーバーもミント、ストロベリー、抹茶など豊富に展開されており、私も常に冷凍庫に常備しています」
シャトレーゼの持ち株会社のシャトレーゼホールディングスは洋菓子店のほか、ワイナリー、ホテル、ゴルフ場などを展開。2019年からは高級志向の都心型新ブランド「YATSUDOKI(ヤツドキ)」を展開。運営するシャトレーゼホテルなどの宿泊施設はスイーツバイキングが満喫できるとしてシャトレーゼファンから人気。グループの従業員数は約4200人、24年3月期の連結売上高は1484億円に上る大企業だ。
(文=Business Journal編集部、協力=はなとも/スイーツコンシェルジュ)