M&Aの本当の勝負は「その後」にある──組織統合を担うキーパーソンに聞く

企業にとって大きな転機であるM&A。しかし、その成否を分けるのは、成立後にあります。
異なる文化や価値観をつなぎ、グループとしての成長へと導く「PMI(Post Merger Integration)」。それは単なる統合作業ではなく、組織の在り方そのものを問い直す取り組みです。
ファインズでは現在、経営改革の一環としてNexil、オルプラの2社を迎え、このPMIに取り組んでいます。その中心を担うのが、人材業界で30年の経験を持ち、上場企業での組織変革も担ってきた執行役員 人材事業戦略室長・中川光一郎氏です。
組織をつなぐとはどういうことか。M&Aの「その後」に向き合う現場から、ファインズの現在地とこれからを聞きました。
M&A後の統合をどう担うか──人材事業戦略室の役割

——中川さんは2026年1月にファインズに参画されたそうですが、その理由を教えてください。
ファインズが事業戦略の一環としてNexil、オルプラの2社とのM&Aを進めるなかで、KPI設計や法制度など、人材業界特有の知見を持つ人材の必要性が高まったことが、参画の背景です。
私自身、人材業界で30年にわたり、マーケット環境の変化や法改正に対応しながら事業を成長させてきました。これまで、急成長する人材ベンチャーで営業や組織運営を担う一方、企業の成長とその裏側にあるリスクの双方を経験してきました。その経験から、リスクマネジメント領域を学び、上場企業の取締役としてIPO前後の組織変革などにも取り組んできました。こうした経験を評価いただき、今回の参画に至りました。
——中川さんが担う、人材事業戦略室の役割を教えてください。
M&Aによってグループ化した人材紹介会社2社のPMIを完了させ、グループ会社の強みを発揮させること。そして、グループ全体でのシナジーを創出することが、当室の役割です。
ファインズは動画によるマーケティングDXを主力事業としており、約7,000社の顧客と接点を持っています。その多くが人材不足という課題を抱えているのが現状です。グループ化した2社が持つ人材事業と既存事業を連携させながら、顧客ごとの課題に応じた人材紹介などの支援を行っていきます。
また、Nexil、オルプラの2社それぞれの成長を推進すると同時に、それらがグループ全体の成長へとつながるよう、シナジーの最大化を図ることも重要なミッションです。
カルチャー統合のリアル──50人との個別面談で見えたもの

——Nexil、オルプラの2社は、ファインズが持つ「想い」に共感してグループインに至っていますが、一般的にM&A時に発生しやすい課題などはあるのでしょうか?
業界にかかわらず、カルチャーフィットの面で齟齬が生じるケースは少なくありません。また、従業員レベルで「親会社・子会社」といった上下関係の意識が生まれてしまうと、カルチャーの浸透やグループとしての融合が進みにくくなることもあります。グループインした企業それぞれに、これまで築いてきたやり方やプライドがあるためです。
——こうした課題に対して、具体的にはどのように対策していくのでしょうか?
私自身は、「親会社・子会社」という言葉をあえて使わず、あくまで同じグループのメンバーとして捉えることを大切にしています。各社の立ち位置をフラットに捉えながら、グループ全体として事業成長に向けて力を結集していく。そのために、組織間の認識や関係性を丁寧にすり合わせていくことが重要だと考えています。
とくに人材業界においては、CA(キャリアアドバイザー)と呼ばれるリクルーターの存在が事業の基盤であり、財産です。だからこそ、彼らにとって働きやすい環境を整えることが不可欠になります。
今回のM&Aにおいても、CAに限らず、バックヤードメンバーも含めた従業員の労働環境づくりは重要なテーマのひとつです。そこで実際に、Nexil、オルプラの両社に在籍する約50名の従業員と個別に面談を行いました。
ファインズへのグループインによって、「何が起きているのか」「自分たちはどうなるのか」といった不安を感じる方も少なくないと思います。そうした不安を解消するため、まずは私自身のこれまでの経験や考えを率直にお伝えしたうえで、M&Aに対する不安や、それぞれの会社の良い点について話していただきました。
また、上司にも同席してもらうことで、本人の強みや特性を多面的に把握するとともに、PMIという大仕事に取り組んでいる上司の立場や実情をお伝えしました。上司も今までの方針や温度感とは違う指示を出す場面がありますし、なかなか自分から声にしにくい部分でもありますので。こうした一連の面談を通じて、組織間の理解が一気に進んだと感じています。
——中川さんから見た、ファインズとNexil、オルプラが持つ強みやお互いを補完できるポイントはどこだと感じますか?
やはりNexil、オルプラは人材事業における集客やマーケティング力が強みになります。
一方、ファインズの持つ強みは営業力であると感じます。実際、Nexil、オルプラとの面談でも「ファインズは営業力が強い」というお話をしてくれる従業員が複数いました。
この双方の強みをいかに融合し、再現性を高めていくか。これが今後、グループ内での事業を仕組み化していく上で重要になります。そのためには、共同プロジェクトやチームの立ち上げ、日常的なコミュニケーションの積み重ねを通じて関係性を深めていくことが大切です。こうした積み重ねが、グループとしての一体感を生み出していきます。
勝ちパターンを捨てられるか──成長企業の分岐点

——今回、M&Aを実施したファインズに対して、中川さんが可能性を感じる部分はどこでしょうか?
ファインズは現在、中小企業を中心に多くの顧客基盤を持っています。日本企業の99.7%が中小企業であることを踏まえると、このマーケットに広くリーチできている点は大きな強みであり、今後の成長余地も非常に大きいと考えています。
今回のM&Aにより人材事業を担う2社がグループに加わったことで、こうした顧客基盤に対して提供できる価値の幅が広がりました。既存事業との連携を通じて、より多角的なサービス展開が可能になる点に、大きな可能性を感じています。
また、実際に参画して感じたのは、人材の質の高さです。優秀であることはもちろん、強い熱量を持ったメンバーが多いと感じています。
とくにマネジメント層は、上場という大きな節目をやり切った人材です。上場は売り上げを伸ばしているだけでは実現しません。組織としての在り方や基準を変え、制度を整えていくことが必要になります。そうした、これまでにやったことのない領域にチャレンジして目線を引き上げることをやり切った、力強さのようなものを感じます。
一緒に働くなかで「楽しい」と感じられるメンバーが多いことも、私がファインズに可能性を感じる要素のひとつです。
——一方、ファインズが変化していかなければいけないと感じるポイントはありますか?
これはファインズに限ったことではありませんが、「勝ちパターンからの脱却」を常に意識していく必要があると考えています。
マーケット環境は日々変化する一方で、強い勝ちパターンを確立している企業ほど、それを変えることに慎重になりがちです。自分たちの手法をアップデートし続けることが心身ともに骨の折れる作業だからこそ、変化する市場のなかで勝ち続けるためには欠かせない要素だと思っています。
一方で、当社が支持されているサービス領域や個性、理念といった、変えてはならない「ファインズらしさ」も存在します。何を変え、何を守るのか。その線引きを、マネジメント層だけでなく、全てのメンバーが共有していることが重要だと考えています。
「異物」の視点が、組織を強くする

——ファインズ、そしてNexil、オルプラがグループとして成長していく上で、必要なことはなんでしょうか?
顧客の共有にとどまらず、営業やマーケティングといった各社が持つ強みやノウハウを共有していくことが重要だと考えています。その際、単に不足している部分を補完するのではなく、掛け合わせることで、それぞれの強みをさらに伸ばしていくことが大切です。
現状はまだ、各社がそれぞれの成長や収益最大化に目を向けている段階だと認識しています。目標の抽象度を「個社」から「グループ」へと引き上げることで、より大きなシナジーを生み出していきたいと考えています。
——そのために、中川さん自身が担っていきたい役割などを教えてください。
まず、ファインズやグループの成長は、私ひとりだけの行動で達成できるものではありません。これを前提として私の役割は、外部から参画した「異物」として、新しい視点や気づきを組織にもたらすことだと思っています。
私がこれまでの経験から、「やるべきこと」や「避けるべきこと」を伝えることは、ファインズにとって異色な提案であると同時に、新たな視点をもたらすことも多いはずです。
また、常に将来の姿から現在を捉えて提言することも意識しています。たとえば、1,000億規模の企業になったときに求められる水準を基準に考えると、現在の企業規模での最適解とは異なる場合もあります。そうした視点から、時には耳の痛いことも含めて発言していくことも、自分の役割ですね。
もちろん、私自身も現在のファインズのメンバーから積極的に知見を取り入れることが、個々の成長につながり、結果として組織の成長につながると感じています。
そのうえで、「自分が評価されること」ではなく、「メンバー一人ひとりがステークホルダーから評価される状態をつくること」を軸に、ファインズ、そしてNexil、オルプラの持続的な成長に貢献していきたいと考えています。
異なる組織が交わることで、新しい視点や成長のきっかけが生まれます。
PMIとは、「違い」を「成長の起爆剤」へと転換するプロセスであり、その成否は、人と人がどれだけ向き合えるかにかかっています。
※本稿はPR記事です。





