ビジネスジャーナル > 企業ニュース > フジでCM放送の効果ない、本当?
NEW

「フジテレビでCM放送の効果がないとバレる」は本当?数千万円の意外な効果

文=Business Journal編集部、協力=坂口孝則/未来調達研究所取締役
「フジテレビでCM放送の効果がないとバレる」は本当?数千万円の意外な効果の画像1
フジテレビの公式サイトより

 幹部社員が女子アナウンサーを接待や懇親会の席などに同席させていた疑いが浮上しているフジテレビジョン。スポンサー企業が相次いでCM放送の見合わせを決定し、その数が70社以上に上っていることが注目されているが、「フジテレビでのCM放送に効果がないことがスポンサー企業にバレてしまうのでは」(テレビ局関係者)という声もある。特定の番組のスポンサーになりCMを放送する「タイム」の場合、放送時間や番組の視聴率によっては1カ月で数千万円の費用がかかるが、果たして高額な費用に見合うほどの効果はあるのか。専門家は「直接的に目に見える効果は少ないが、それでも企業がCM放送をやめないのには理由がある」と指摘する。

 フジテレビの番組にレギュラー出演していた中居正広さんと女性との間でトラブルが起きた会合に、同局の幹部社員が関与していた疑いが持たれている問題。港浩一社長ら経営陣は17日、記者会見を実施したが、出席するメディアを記者クラブに加盟する社に限定し、会見の模様の映像の撮影を禁止。さらに、立ち上げる調査委員会を日弁連の定義に基づく第三者委員会の形態にはしないと説明したことを受けて批判が拡大した。

 持ち株会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)は23日の臨時取締役会で、日弁連のガイドラインに従った第三者委員会の設置を決議。27日には改めてオープンなかたちで会見を行う予定であり、同日にはフジテレビは臨時取締役会を開催して港社長の進退を含めて議論するとみられている。

「23日の社員説明会でも社員から港社長に退任を求める声があがり、港社長自身も過去に外部の関係者との接待の席にアナウンサーを同席させていたとも報じられており、スポンサー企業に戻ってきてもらうためにも港社長の退任は必須とみられている。フジが以前から企業やタレント、プロダクションへの接待の場にアナウンサーを同席させているというのは業界では知られた話で、他局にはみられない慣習。今回の件を契機に、フジが企業体質の正常化を進められるかが問われている」(テレビ局関係者)

テレビ朝日「間接的に視聴者の行動に影響を与えることはできます」

 17日の会見を受けて素早い対応を見せたのがスポンサー企業だ。会見翌日18日にはトヨタ自動車や日本生命保険など大手企業がフジテレビ番組でのCM放送の見合わせを発表し、この動きに追随する企業が続出。その数は現時点では70社以上に上っている。フジテレビの2024年4~9月期の放送収入は、番組内のCM放送枠の「タイム」が368億円、それ以外の「スポット」が343億円で計約712億円。フジテレビは放送見合わせ分の広告料金について返還する方針と伝えられており、仮に2~3月の放送収入がなくなれば約240億円の減収要因となる。また、仮に改変期にあたる4月から半年間、放送広告契約がなくなると、売上高が700億円規模で押し下げられることになる。

 そうしたなか、企業が高額な費用をかけてCMを放送して、それに見合う効果を得ているのかという点が一部で話題となっている。テレビCMには特定の番組内で放送する「タイム」と、番組は指定せず放送時間を指定する「スポット」があり。在京キー局の場合、タイムは1カ月で数十万~数千万円、スポットは1回当たり数十万~100万円ほどとされる。その費用対効果について、在京キー局の1社であるテレビ朝日は公式サイト上で次のように説明している。

<テレビCMの視聴率を合計した指標のGRPは、【個人全体視聴率×CMの本数】の計算式で算出することが可能です。仮に、視聴率が5%の番組に3本CMを放送した場合は、5%×3本=15GRPとなります。GRPはテレビCMの露出量ともいえます。この値が高ければ高いほど、より多くの視聴者の目に触れていると考えられるでしょう。すなわち、GRPが高い数値だった場合、出稿したテレビCM の費用対効果も高いと言えるでしょう>

<そもそも、テレビCMには商品やサービスへの興味・関心を抱かせるという役割があります。テレビCMなどのオフライン広告では、直接購入につなげる方法はありませんので、間接的な効果を考えるようにしましょう。たとえば、特定のテレビCMに何度も接触しているうちに、しだいに興味を抱くようになり、結果的に気になって購入するというケースもあります。テレビCMを視聴してダイレクトに商品の購入に至ったかまでは計測できませんが、間接的に視聴者の行動に影響を与えることはできます>

BtoB企業も求人のためにCM放送

 経営コンサルタントで未来調達研究所取締役の坂口孝則氏はいう。

「インターネット広告以外の広告は明確な効果というのは算出できませんが、結論からいうと、効果がないサービスは自然淘汰されますし、企業も効果がないものに高額な費用を支払いません。ネット広告がまだ普及していなかった以前と比べて、テレビCMの効果が低下して、料金も下がっているかもしれませんが、スポンサー企業が『この金額であればギリギリ費用対効果が見込める』という水準にまで料金が落ちているのではないでしょうか。ベンチャー企業が地方局のCM枠を買ったりもしていますが、体力がない企業が安くない金額を払ってまで効果のないことはしないでしょう。

 直接的に商品やサービスの販売増加に結びつかないかもしれませんが、ある企業の方は冗談半分で『社員の親御さんを安心させるためにCMを流している』と言っていました。未曾有の人手不足の今、BtoB企業も求人のために企業イメージをマスに訴える目的でやっているという面があります。宣伝効果とは少し違うのですが、日本人は1人当たり3時間ほどテレビをつけっぱなしにしているというデータもあり、能動的に情報を発信するメディアとして視聴者からは高い信用を得ますし、企業はテレビCMを放送すると視聴者に強いブランドイメージを印象づけることができるので、いまだにテレビは“信頼できる広告媒体”とみなされているのでしょう」

 では、テレビCMは今後も残っていくのか。

「先ほど明確な効果は算出できないといいましたが、例えばある企業はCMの画面上に記載するお問い合わせ電話番号を放送時間ごとに変えて、どの時間帯に流せば効果が高いかを測定していました。ただ、基本的にはスポンサー企業は定量的な効果を把握しておらず、テレビCMがそのような性質である限り、市場規模は徐々に縮小していくのかもしれませんが、かといって広告価値が完全に否定されるものでもないでしょう」

(文=Business Journal編集部、協力=坂口孝則/未来調達研究所取締役)

坂口孝則/未来調達研究所取締役

坂口孝則/未来調達研究所取締役

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。サプライチェーン分野の知識を使い、ものづくり領域の先端解説などを行う。
未来調達研究所

Twitter:@earthcream

「フジテレビでCM放送の効果がないとバレる」は本当?数千万円の意外な効果のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!