日銀は24日の金融政策決定会合で、政策金利の0.5%程度への利上げを決めた。昨年3月のマイナス金利解除、同7月の0.25%への利上げに続く政策修正で、金利はリーマン危機直後の2008年10月以来、約17年ぶりの高水準に達した。日銀は今後の追加利上げも模索。「金利のある世界」はいよいよ定着しつつある。ただ、今月20日に就任したトランプ米大統領の政策により、世界経済や金融市場が混乱するリスクへの警戒感はなお強い。
◇市場との対話重視
「経済・物価見通しが実現していくとすれば緩和度合いを調整していく」。植田和男日銀総裁は24日の記者会見で、経済・物価情勢の改善が続けば、さらなる利上げに踏み切る考えに変わりはないと強調した。
日銀が断続的に利上げするのは、深刻な人手不足を受け、企業に賃上げの動きが広がり、2%の物価目標実現に自信を深めていることが背景にある。初任給を大幅に引き上げるケースも目立ち、ある幹部は「賃上げを既定路線とする企業が増えている」と、今春闘の行方に手応えを示す。
また、会合直前の14日に氷見野良三副総裁、15日に植田総裁が相次いで「(1月に)利上げを行うかどうか議論し、判断する」と発言し、市場の観測を一気に高めた。昨年7月の利上げが「サプライズ」となり、株価が暴落したトラウマから、市場との対話重視にかじを切った格好だ。
◇「好循環」、実感乏しく
ただ、食料品を中心とした生活必需品の値上げは継続し、ガソリン価格も上昇基調をたどる。賃上げが物価高に追い付かず、実質賃金のプラスが定着するかも未知数で、日銀が描く「賃金と物価の好循環」は実感が乏しいのが実情だ。
米国の経済政策もリスク要因となる。トランプ大統領は就任早々、中国やメキシコ、カナダに高関税を課すことを検討すると表明したが、「(金融市場は)比較的冷静に受け止めた」(国内証券)。これも今回の利上げ判断を後押しした。
しかし、今後米国が全ての輸入品に一律関税を課せば、日本の輸出企業への打撃は必至。植田総裁は24日の会見で、米国の関税政策の影響について、「具体的に申し上げられる段階にない」と述べたが、「(今後の政策運営上で)最大の注目点の一つだ」と強調した。
「金利のある世界」が定着すれば、企業は賃上げ原資を稼ぐため高付加価値商品やサービスを開発することが不可欠となる。デフレ時代の「コストカット依存」から、イノベーション(技術革新)や生産性向上を一段と重視した経営への移行がカギを握る。国債の金利も上昇し、利払い負担が増える政府も安易な歳出拡大には頼れない。金融正常化の円滑な実現に向け、日銀はより丁寧な政策運営が求められる。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/01/24-20:01)