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SBI証券、株価操作の疑い、新規上場の初値で…他社と比べて「度合い」焦点

文=Business Journal編集部
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SBI証券のHPより

 インターネット証券・SBI証券が、引受業務を手がける企業の新規株式公開において初値を人為的に操作している疑いが報じられている。株価操作は金融商品取引法に違反する可能性がある。13日付「日本経済新聞ウェブ版」記事によれば、証券取引等監視委員会は同社を行政処分するよう金融庁に勧告する検討に入ったという。日経記事によれば、同社は引受業務を担当する新規上場案件において、初値が公開価格を上回るよう、傘下の金融商品仲介業者を使って顧客に買い注文をさせていた疑いが持たれているという。

 企業の新規株式公開(IPO)意欲は旺盛だ。東京証券取引所の発表によれば、2023年の国内新規株式公開の件数は前年比13社増の124社の見込みで、過去10年間で2番目に多い。KOKUSAI ELECTRIC(旧日立国際電気)をはじめ初値ベースの時価総額が1000億円を超えた企業は前年比2倍の6社に上る。

 SBI証券は22年度の新規株式公開案件の98.9%にかかわり(前出・日経記事より)、引受業務において国内首位。SBI証券を傘下に持つSBIホールディングス(HD)の口座数は1100万を超え、口座数でもネット証券首位となっている。

 SBIHDは積極果敢な行動で知られる。19年、地域金融機関との「第四のメガバンク構想」、いわゆる地銀連合構想を発表。SBIHDが過半を出資して持ち株会社を設立し、大手銀行や地方銀行、ベンチャーキャピタルなどに出資を募り、地銀に金融基幹システムなどのインフラのほか、商品・サービスを提供する構想を掲げた。地銀の島根銀行(松江市)、福島銀行(福島市)、清水銀行(静岡市)、東和銀行(前橋市)、じもとホールディングス(仙台市)などに出資を行い、地銀連合形成を進め始めた。21年には、新生銀行に対して銀行業界では異例の敵対的TOB(株式公開買い付け)をかけることを発表。買収を完了させ23年にはSBI新生銀行に社名を変更し、9月に上場を廃止して非公開企業となった。

 新興企業向けビジネスにも注力している。傘下のSBIインベストメントは累計で7000億円超のベンチャーファンドを組成。今年11月にはAIやフィンテックなどの新興企業に投資するファンドの運用を開始し、金額は最大1000億円程度の見通しとなっている。

 そして今年、金融業界を驚かせたのが、SBI証券が8月に発表した国内株式の取引手数料の無料化だ。これにネット証券2位の楽天証券も追随した一方、マネックス証券は追随しないと発表するなど、業界の動きは二分している。

「IPO引受業務の手数料などでしっかりと利益を稼いでいて体力があるSBI証券だからこそできる芸当。この手数料無料化でネット証券市場におけるSBI証券の一人勝ちの構図がますます強まった。10月にはNTTドコモがマネックス証券を子会社化したが、マネックスグループとしてはSBI証券に白旗をあげ、将来的に高い収益が見込めなくなったネット証券事業への関与を薄めていく意向だと受け止められている」(金融業界関係者)

SMBC日興証券による事件

 株価操縦としては、SMBC日興証券による事件が記憶に新しい。19~21年、東証1部上場(当時)の10銘柄について、終値を安定させる目的で市場が閉まる直前に計44億円の自社資金で買い注文を入れていたというもので、東京地裁は金融商品取引法違反を認定し同社に罰金7億円、追徴金約44億7000万円の支払いを命じている。

「この事件では幹部社員個人にも懲役刑(執行猶予付き)の判決が出されており、それだけ株価操縦は重大犯罪だということ。日興証券の事案は組織ぐるみで大量の買い注文を入れるという『わかりやすい不正』で、証拠となる社内メールの存在などもあり、割と当局は立証しやすかったといえる。一方、今回のSBI証券の事案は『顧客に買い注文させていた』疑いがあるというもので、何をもって『買わせていた』と判断されるのか、かなり立証は難しいという印象。証券会社の営業担当者が会社が推奨する銘柄について注力して顧客に薦めるということは普通にあるし、IPOの主幹事を引き受けた企業の銘柄を顧客に積極的に売り込むことも普通に行われている。今回取り沙汰されているSBI証券の行動が、他の証券会社と比較してどれくらいの度合いのものだったのかが気になるところ。対面販売を手がける既存の大手証券と比較して、その度合いが突出していないのだとすれば、当局がSBI証券だけをやり玉にあげるのは不公平ということになる」(同)

SBI証券「当社からお知らせできることはございません」

 SBI証券は当サイトの取材に対し、「報道は認識していますが、本日HPに書かせていただいたことが、お伝えできる最大限のところです。(監視委の調査を受けているかどうかは)守秘義務があり非開示となっているため、お答えできません」としている。同社は13日付けで以下内容のリリースをHP上に掲載している。

「本日、一部報道機関において、証券取引等監視委員会が当社に対して行政処分を行うよう金融庁に勧告する方向で調整している旨の報道がなされましたが、これは当社として認識している事実ではなく、現時点で当社からお知らせできることはございません。今後、開示すべき事項が判明した場合には、速やかに公表いたします。当社としましては、お客さまにご迷惑とご不便をおかけすることがないよう最大限の対応に努めてまいります」

(文=Business Journal編集部)

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