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ローソン純利益25%増の裏で「セブン一人負け」説は本当か…コンビニ決算に見る経済圏

2026.07.19 06:00 2026.07.18 19:33 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント

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●この記事のポイント
2026年3〜5月期決算で、ローソンは純利益25%増(206億円)、ファミマも3%増(218億円)で過去最高益。一方セブン&アイHDは連結24%増(606億円)ながら国内コンビニ事業は営業利益4%減。KDDI・Ponta、三井住友Vポイントなど経済圏争いの構造から数字の裏側を読み解く。

 7月上旬、コンビニエンスストア大手3社の2026年3〜5月期(第1四半期)決算が出そろった。ローソンは純利益が前年同期比25%増の206億円、ファミリーマートも3%増の218億円でともに過去最高を更新。一方、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、国内既存店の客数低迷が続いていたことから「一人負け」と評されがちだったが、ふたを開けてみれば連結純利益は前年同期比24%増の606億円だった。

 見出しの数字だけを追えば「ローソンとファミマの躍進、セブンの苦戦」という単純な図式が浮かぶ。しかし決算の中身を丁寧に読み解くと、実態はもう少し込み入っている。3社が採る戦略は「今すぐ効く販促」と「時間のかかる構造改革」に大きく分かれており、しかもその背後では、通信・金融各社を巻き込んだ「経済圏」の主導権争いが同時進行している。数字の額面だけで優劣を判断すると、数年後に見える景色を見誤りかねない。

●目次

ローソン・ファミマの戦術的勝利…節約志向を突いた「セット割」

 ローソンの好決算を牽引したのは、おにぎり2個を買うとドリンクがもらえる「セット割」に代表される販促策だ。営業収益は5%増の3105億円、事業利益は19%増の324億円で、いずれも同期間として過去最高となった。全店平均日販も59万4000円と6年連続で最高を更新し、客数も1.2%伸びている。物価高が続くなかで「単品では買わないが、セットなら得」という消費者心理を的確に突いた格好だ。

 ファミリーマートも同様の路線で成果を出した。内容量を45%増やす「なぜか45%増量作戦」や、卵・冷凍食品の割引企画「生活応援割」が奏功し、純利益は3%増の218億円、事業利益は10%増の307億円と、いずれも過去最高を記録した。人件費や光熱費、新型コーヒーマシン導入によるコスト増はあったものの、システムコストの削減や店内デジタルサイネージの広告収入増で吸収している。

 両社に共通するのは、「今すぐ効果が出る」ゲリラ的な販促で客数と客単価を同時に押し上げ、短期決戦を制したという構図だ。

セブン&アイ 「一人負け」ではなく「二正面の踊り場」

 一方のセブン&アイの決算は、単純な減益とは言い切れない。連結純利益は24%増の606億円だったが、これは海外コンビニ事業(主に北米)のガソリン販売好調が牽引した結果であり、営業収益自体は前年比14%減の2兆3788億円だった。これは2025年6月のセブン銀行株一部売却や、イトーヨーカ堂・ロフトの非連結化といった構造変化が影響しており、単純比較がしにくい年になっている点は注意が必要だ。

 より実態を映すのは、国内コンビニエンスストア事業のセグメント数値である。売上収益は3%増の2301億円だった一方、営業利益は4%減の522億円にとどまった。セルフレジや品出し効率化システムへの投資、広告宣伝費の増加がコスト増要因となっており、これはまさに「今の利益を削って、数年後の省人化・効率化インフラを先に作っておく」という中長期投資の裏返しといえる。

 ただし明るい兆しもある。5月には既存店客数が11カ月ぶりに前年実績を上回った。増量企画などの販促強化に加え、店内で仕上げる「できたてパン」「いれたて紅茶」といったレジ横商品の平均日販が15%伸びたことが寄与した。東海東京インテリジェンス・ラボの角英樹シニアアナリストは、こうした販促によって国内既存店売上高が成長軌道に戻りつつあると評価している。

 つまりセブンの決算が示すのは「一人負け」ではなく、「海外の稼ぎで全体を底上げしつつ、国内では投資先行でいったん利益を薄くしている」という、いわば二正面作戦の踊り場にいる姿だ。短期的な販促で客数を積み増すローソン・ファミマと、足元の利益を犠牲にして省人化インフラを整えるセブン。どちらの選択が正しかったかは、人手不足がさらに深刻化するであろう数年後にならなければわからない。

「コンビニ各社の決算を単年度の増減益だけで評価するのは危険です。特にセブンのように大型の資産売却や事業再編を伴う年度は、営業収益や利益率の前年比較が歪みやすい側面があります。国内既存店の客数・客単価の推移や、投資が翌年度以降にどう利益化されるかを追うべきです」(流通コンサルタント・永田由紀氏)

舞台はコンビニ単体から「経済圏の代理戦争」へ

 もう一つ見逃せないのが、コンビニの戦いがもはや「弁当の味」や「クーポンの太っ腹さ」だけで決まる勝負ではなくなっている点だ。背後にあるスマホ決済・共通ポイント・通信サービスを巻き込んだ「経済圏」の主導権争いが、各社の戦略を規定しつつある。

ローソン×三菱商事・KDDI(Ponta/au PAY):ローソンは2024年2月、三菱商事・KDDIと資本業務提携を締結し、その後非公開化。KDDIは2024年10月に「auスマートパスプレミアム」を「Pontaパス」へリニューアルし、ローソンでの週替わりクーポンやau PAY決済時のポイント還元を強化した。加入数はリニューアル前の1.6倍に伸びているとされ、通信データと購買データを掛け合わせたピンポイント販促が、今回の「セット割」効果をさらに増幅させている面がある。

ファミリーマート×三井住友(Vポイント):旧Tポイントを引き継いだ「Vポイント」は、2025年10月に三井住友カードがCCCMKホールディングスの株式追加取得を発表し、2026年3月末をめどにグループの出資比率を40%から80%へ引き上げた。これにより運営の主導権は事実上、三井住友フィナンシャルグループ主導に移行している。ファミマは主要加盟店の一つとして、この巨大金融経済圏の実店舗タッチポイントという位置付けを強めている。

セブン×自社経済圏(7iD・セブンマイル):セブンはローソンやファミマのような通信メガキャリアとの資本提携を持たず、7iDを基盤とした自社アプリ・セブンマイルプログラムでの囲い込みを進めている。2026年2月にはマイル付与対象を公共料金の支払いなどにも拡大するなど機能強化を図っているが、他社のような「通信契約数×決済×リアル店舗」を組み合わせた経済圏の規模には及んでいないのが実情だ。ここへの対抗策をどう打ち出すかが、今後のセブンの課題として残る。

決算書は小売業界の縮図

 今回の決算が示すのは、単純な「勝者」と「敗者」の物語ではない。ローソンの25%増益は、緻密な販促とKDDI・Ponta連合のデータ活用が噛み合った成果として素直に評価されるべきだし、ファミマの過去最高益も、増量キャンペーンという地道な施策の積み重ねの結果だ。

 他方でセブンの国内セグメント減益を「凋落」と単純化するのも早計だろう。人手不足とコスト高が構造的に続くと見込まれるなかで、省人化設備やシステムへの投資を今のうちに終わらせておくという判断には、それなりの合理性がある。実際、5月の客数が11カ月ぶりにプラスに転じたことは、投資の効果が出始めている可能性を示唆する。

 リアル店舗の省人化・効率化を先に固めるセブンの戦略が奏功するか、通信・金融の経済圏で顧客を囲い込むローソン・ファミマの戦略が優位に立つか。どちらも一つの正解ではなく、数年単位で検証されるべき経営判断だ。コンビニの決算書は、単なる小売業の業績報告ではなく、日本のリテールビジネス全体を巻き込む経済圏争いの縮図として読むと、また違った景色が見えてくるはずだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント)

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公開:2026.07.19 06:00