老舗出版社A社(仮名、以下同)での社長あいさつは「ウチは破産寸前ですが打つ手はあります」から始まったという。
「その“打つ手”を後から聞いてみると、韓流コンサートのチケット販売だとわかりました。いまさら韓流とは……」(中堅社員)
社長自ら「破産寸前」と宣言するだけあって、当然経費削減も行われている。交通費削減としてタクシー利用を控えるというのはどこの企業でも行われていることだが、A社はもっと細かい。仕事で東京メトロは使ってもいいが、都営地下鉄は利用しないように命令が出たのだ。東京の地下鉄には東京メトロと都営地下鉄があり、都営地下鉄はやや料金が高い。とはいっても、せいぜい20~30円の差である。
「都営線の駅しかないところはどうするのか聞いたら、『一番近い東京メトロの駅まで行って、そこから歩くように』と言われました。ある日、経理に呼ばれて行ってみると、机の上には蛍光ペンでマーカーしてある交通費伝票。経理担当者から『行き先の築地市場は都営線の駅だけど』と指摘されました。言い争うのもバカバカしいので、『すいません、築地の間違いです』と言ったら、担当者は金額を修正していました。一方では、社員には交通費削減を徹底しているのに、編集長はタクシー使い放題。用もないのに深夜まで残業しています」(A社社員)
A社は経費削減だけでなく、“増収策”も考えていた。
「上司たちが『障がい者でも雇おうか。そうすれば国から補助金が出るんだろ?』と真顔で話していたのを聞きました。編集部にはアルバイト社員もいるんだから、そんな話するなよ、と思いました。情けないです」(同)
また、業績面とはまったく別の問題で「この会社は大丈夫か?」と思ったという、別のA社社員が語る。
「毎朝、会社のポストに聖教新聞が入っているのです。それに選挙がある時はいつも、係長以上の役職者には公明党候補に票を入れるようにとメールが来るそうです。そればかりか、選挙後に『ちゃんと入れてくれた?』と確認された人もいます。ある役員が学会員らしいのですが、社長は若いので言いなりだそうです」
労働契約書に給料の記載がない
出版社の中には、ガバナンスや社員のモラル面で問題が多い企業もある。中堅出版社B社では、毎月50万円近くの接待費を半年以上使っていた編集部員がいた。その使途がキャバクラだったことが発覚した。