6月22日付記事『巨人・ゆうちょ銀行上場、民業圧迫批判のデタラメ 金融業界の脅威になどならない』
6月26日、日本郵政の西室泰三社長は定例会見で、今秋予定している日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険のグループ3社の株式上場について、30日に東京証券取引所へ本申請を行う意向を表明した。この3社はもともと日本郵政公社の郵便、郵便貯金、簡易生命保険の郵政3事業で、2007年10月に解体・民営化された。同事業には以前から「民業圧迫」という批判がつきまとい、日本郵政へは宅配便、ゆうちょ銀行へは金融機関、かんぽ生命へは生命保険の各業界が事あるごとに「民業圧迫」を口にしては政府にプレッシャーをかけてきた。それはおそらく上場後も変わらず、今後も過去を背負いながら批判され続けるのだろう。
とりわけゆうちょ銀行は、以前から「郵貯が民間金融を圧迫している」と言われ続けてきた。1人1000万円という上限枠はあるが、郵便貯金、特に定額貯金は郵便局の窓口で個人預金をどんどん吸い上げ、預金集めに四苦八苦する他の金融機関から目の敵にされてきた。そんな過去の経緯がある上に、ゆうちょ銀行は全国に約2万4000カ所の郵便局網、民間最大の三菱UFJフィナンシャル・グループの預金残高約153.3兆円をしのぐ郵便貯金残高約177.7兆円を有し、運用資産は205.8兆円とメガバンクの総資産とほぼ肩を並べるという規模を誇る。その「巨人」がまもなく上場するというのだから、他の金融機関にとっては気になる存在だろう。
だが、ゆうちょ銀行が他の金融機関にとって「最強の敵」になるかというと、現状ではどうしても疑問符がつく。
ゆうちょ銀行の住宅ローンは「すき間産業」
ゆうちょ銀行は2008年5月からスルガ銀行と提携して住宅ローンに参入している。これは契約を取り次ぐ「代理店」の立場だが、もし個人向け貸付が金融庁から新規事業として認められれば、郵貯資産を使った住宅ローンの貸付ができるようになる。それが銀行など他の金融機関にとって脅威になるともいわれている。
現在の住宅ローン「夢舞台」は、銀行のそれと同じではない。良くいえば「弱者の味方」、悪くいえば「貸し倒れリスクの高いローン」である。例えば年金生活者、自営業、派遣社員や契約社員、転職したばかりの人、独身女性など、銀行などが取り扱う一般の住宅ローンを申し込んでも審査がなかなか通らないような人でもローンを組める可能性が高い。その代わりにローン金利が高くなっている。貸し倒れリスクを金利の中に織り込んでいるためである。それでも毎月の返済額が抑えられる50年の超長期ローンまで揃っている。
このローンを設計したのはスルガ銀行だが、住宅取得を目指す人の目には「郵便局は最後のよりどころ」と映っている。銀行の審査に落ち続けても「まだ、郵便局がある」という「最後の貸し手」だ。かつてリーマンショックの頃、「郵便局の住宅ローンは日本版サブプライムローン」と、その危険性を取り沙汰する報道さえなされた。