「顧客満足度日本一」への疑問
サービス産業生産性協議会は、6月10日に発表された「15年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)第1回調査」でモスを「飲食総合」部門1位とした。しかし本調査で、例えばしゃぶしゃぶ専門店「木曽路」は7位だが、仲居さんがテーブルで料理をつくってくれる本格お座敷レストランのサービスより、モスのそれが手厚いというのは無理がある。
つまり、「印象が良い」というだけの調査結果だ。「木曽路より一桁低い客単価の割には、そのサービスの印象がいい」ということだ。そして、木曽路よりモスの総来店客が多いため、得票数は伸びるだろう。
モスやマックの客単価は公表されていないが、前出の『ハンバーガーチェーンの比較経済分析』によれば、「マック=578.5円、モス=910.4円とモスのほうが50%以上高い」という。それだけ価格帯が離れた2つのチェーンの顧客満足度を比べることも、また無意味だろう。
海外展開を担っているのはモスフードではない
モスの海外展開を実質的に担っているのは、台湾での合弁企業である安心食品服務股ヒン有限公司だ。モスの海外店舗323店(15年6月末)の大部分が、アジアとオーストラリアにある。台湾が240店舗と最大の拠点だ。台湾での店舗はすべて直営で、他のアジアやオーストラリアのオペレーションも安心食品服務が展開している。モスは台湾で大手企業である東元電機と90年に合弁を組んだ。安心食品服務の黄尚仁執行副総経理は、「中華民国台湾投資通信」(April 2012 vol.200)に掲載された記事『日台アライアンス特別インタビュー』でこう述べている。
「最初の10年にオープンしたのが40店ほどだったのに対し、次の10年には180店を開設しました」
苦闘した「最初の10年」とは、皮肉なことに櫻田厚現社長が台湾に駐在して業務開発に直接当たっていた時代だ。現在、モスは安心食品服務に3割ほどしか出資しておらず、現地に派遣している社員も2名のみ。実質的には安心食品服務は現地パートナーによって経営されているといってよい。
台湾合弁先に経営を移譲するのが改善の近道
マック離れをした消費者たちは、それではどこに向かってしまったのか。モスなどの同業態には行かず、他の業態に流れてしまったとみられる。私の見立てではコンビニエンスストアだ。コンビニ弁当を買ってくる、または「イート・イン」コーナーで手早くランチを済ませる。予算としてはワンコイン、つまり1食500円程度だろう。