モスバーガーを展開するモスフードサービスの2015年3月期営業利益は、前年比27.9%減の15億5400万円だった。原材料費の高騰や円安による調達費用の上昇などが影響したという。売上高は663億1000万円(前期比1.5%増)、経常利益は15億2300万円(同35.9%減)となった。
国内ハンバーガーチェーン首位の日本マクドナルドホールディングス(HD)は、連結売上高を2947億円(12年)から2223億円(14年)へ、この2年間で724億円落とした。業界2位であるモスが、この半分の362億円でも取り込めていれば、同社の売上高は50%以上も伸張できた。
ところがモスの15年3月期の売上高の伸びはわずか1.5%で、「少しも動いていない」に等しいし、16年3月期の予想でも同675億円と低い伸び幅しか示せていない。
モスの成長は足踏みを続けている。店舗数は15年6月末で1765店だが、12年3月末は1756店だった。そもそも1500店を達成したのが1998年のことで、海外店舗増を差し引けば、ほぼ20年の間「不動の」2位を守ってきている。ちなみに94年までは店舗数でマックを上回っていた。
14年3月末時点の数字で、マックの店舗数は3093、国内3位のロッテリアは446店、4位のフレッシュネスバーガーは165店舗である。ハンバーガー業界の店舗数は「1マック、2モス、3その他」と覚えることができる。
「モスは成熟期」は本当か?
企業としてのモスの発展段階を黎明期、発展期、成熟期に分けると、98年以来の櫻田厚現社長の時代が第3期「成熟期」とされている(『ハンバーガーチェーンの比較経済分析』<大東文化大学古屋ゼミ/2012年>より)。
しかし私の見地からは、創業社長だった櫻田慧氏が急死した97年までが「成長時代」で、それ以降は現在に至るまでずっと「長期低迷時代」が続いている。
創業者の慧氏はカリスマ経営者として知られ、加盟店からの信頼と尊敬が厚く、絶対的な存在だった。モス・チェーンは大部分がフランチャイズ加盟店なのだが、「櫻田哲学」に賛同して参画した店が多かった。
慧氏が急死した時、甥の厚氏はまだ45歳。台湾での業務開発が長かった。社長が交代すると、それまで本部であるモスフードの営業利益率は10%前後と高いレベルで推移していたのが急減して、現在に至っている。15年3月期は2.3%だ。社長交代によって、本部と加盟店のパワーバランスに大きな変化があったと見るべきだ。