時価総額は企業の価値そのものである。今年2月5日(終値ベース)の時価総額でソニーは3兆5905億円となり、パナソニック(3兆1961億円)を抜いた。ソニーはその前日に15年3月期連結営業利益が従来の赤字予想から一転、200億円の黒字になると発表。業績底入れの期待から株価は大きく上昇した。その後、5月19日には年初来高値の3970円をつけた。
ソニーは6月23日の定時株主総会後に開示した臨時報告書で、平井一夫社長の再任に賛成した割合が88%だったと明らかにした。前年の89%を下回った。16年3月期は最終黒字を見込むなど業績回復の兆しが見えているが、株主は平井氏の経営手腕に対してはいまだに懐疑的なのである。
平井氏が社長に就任した12年の株主総会における賛成比率は91%、13年は94%だった。しかし、14年から2年連続で90%台を割り込んだ。米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が平井氏の社長再任に反対を推奨していた。ISSは過去5年間のROE(株主資本利益率)の平均が5%を下回り、直近も5%を下回る企業の社長や会長の選任議案に反対するよう機関投資家に勧めていた。
ソニーのROEは12年3月期がマイナス19.9%、13年が2.0%、14年がマイナス5.8%、15年もマイナス5.5%と続いており、経営者失格と見なされたのだ。それでも平井氏は強気の姿勢を見せており、新中期経営計画の最終年にあたる18年3月期の経営数値目標に「ROE 10%以上」を掲げている。平井氏への賛成票は低かったが、業績回復への期待から株価は急騰し、年初からの株価上昇率は40%を超えた。ソニーの復活、成長への期待が高まった。
株価急落
ソニーの株価が急落したのは6月30日。公募増資と新株予約権社債の発行で最大4400億円を調達すると発表したからだ。増資報道を受けた6月30日の東京市場で、同社株価は一時、前日比9%安の3430円まで下落した。増資による1株当たり利益の希薄化を投資家が懸念したからだ。増資によって自己資本は最大で10%以上増える。
ソニーが7月30日に発表した15年4~6月期の連結決算(米国会計基準)の営業利益は前年同期比38%増の969億円、純利益は3.1倍の824億円となった。だが、スマートフォン(スマホ)の赤字は拡大しており、スマホの年間販売台数は3000万台から2700万台に1割下方修正された。保有していたオリンパス株式の一部売却益486億円が最終利益に上乗せされていた。