電力各社は決して話したがらないが、東日本大震災以来、突発的な大停電のリスクに怯えながら、廃止したはずの老朽火力発電所を戦線復帰させて酷使、なんとか電力需要のピークを乗り切った昨年までとは打って変わって、今夏の電力需給には大きな余裕が生まれている。
もし、その理由が九州電力の川内原子力発電所の再稼働にあると思われるなら、それは大きな間違いだ。
というのは、電力需給が安定した最大の理由は、「天候に大きく左右されて不安定な電源」と電力各社が買い取りを忌み嫌ってきた太陽光発電が、各地で本格稼働し始めたことにあるからである。
だが、我々消費者は、これで酷暑の中での節電から解放されると手放しに喜ぶわけにはいかない。「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の増額によって電気料金が一段と高騰するなど、家計圧迫要因が山積みだからだ。
需給状況に異変
東日本大震災から5度目の夏となった今夏、すっかり注目されなくなってしまったが、電力各社が毎日ホームページで公開している「でんき予報」で丹念に電気の需給状況をみていくと、ちょっとした異変が起きている。突然、電力会社の供給力に大きな余裕が生まれただけでなく、不思議なことに、気温が上がりエアコンをフル稼働する14時頃とされていた夏の需要のピークが、18時や19時といった夕暮れ間近の時間帯にシフトしている日が目立つのだ。
例えば、関東を本拠地とする東京電力の8月前半(1日~15日)のでんき予報をみると、昨年と同様に、大規模停電を誘発しかねない「非常に厳しい(使用率97%以上)」やそれに次ぐ「厳しい(95%以上)」に達した日は1回もない。さらに、昨年は4回あった「やや厳しい(90%以上95%未満)」も1回(8月6日)だけだ。電力需要がピークを迎えた時間帯も9日、13日、15日が「19時から20時」、14日が「18時から19時」と陽が落ちる遅い時間帯になっている。
多少の差はあれ、こうした傾向は、全国の電力会社に共通している。原子力発電への依存度が最も高かったことから需給がひっ迫するとしていた関西電力の場合、15日間すべて90%未満で、「厳しい」や「やや厳しい」は1回もない。そして、電力使用のピークは、2日、9日、13日、14日、15日が「19時から20時」とやはり夕方にシフトしている。
8月14日に発送電を再開した川内原発の再稼働まで、電力需給のひっ迫が懸念されていた九州電力も、実は東京電力や関西電力と似たり寄ったりだ。電力使用率は15日間すべて90%未満。使用のピーク時間帯は2日、9日、13日、14日、15日の5日間で「19時から20時」となっている。