こうした傾向は、東日本大震災の後遺症に悩まされた昨年や一昨年とは様変わりだ。昨年や一昨年は、各社がすでに廃止処分にしていた石炭、石油などの火力発電所を戦線に復帰させて、老朽発電所ならではのトラブルに神経を尖らせながら安定供給に躍起になっていた。それでも発電所のトラブルが続発し、あわや大停電という状況が何度かあったのだ。
さらに、問題なのは、政府の「電力需給に関する検討会合」が5月に「2015年度夏季の電力需給対策」を決定した際に想定していたのと正反対というべき状況になったことだろう。
というのは、政府は、「関西電力及び九州電力は単独で予備率3%以上を確保できず(それぞれ0.8%、▲3.3%)、他社からの受電により、何とか予備率3%以上を確保」と想定していたからだ。政府の問題は、その想定に基づいて、「(各方面に)『数値目標を伴わない』節電の協力を要請する」などと、イソップ物語のオオカミ少年並みにいい加減な警鐘を鳴らしたことだけではない。各電力会社への「発電所の保守・保全の強化」の要請を行ったほか、あろうことか「自家発電設備の活用を図るため、中西日本において設備の増強等を行う事業者に対して補助を行う」として、予算バラマキの根拠に挙げていたのである。
政府・経産省の過少見積もり
それにしても、そもそも政府・経済産業省はなぜ、こんな杜撰な見積もりをしたのだろうか。
同省が所管している「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」の施行状況をみていれば、あり得ないような読み違いだ。FITの対象になる太陽光発電や風力発電の出力は今年4月に2011万キロワットとこの1年間で倍増していたのである。しかも、このうちの95%を太陽光発電が占めている。
ところが、「2015年度夏季の電力需給対策」の決定を伝える5月22日付の日本経済新聞電子版の記事は、政府が太陽光発電の容量を「今夏は原子力発電所5基分に相当する510万キロワットを見込んでおり、太陽光で需要の3%を賄う」と報じていた。政府・経済産業省の過少見積もりは明らかなのである。
ここからは推測だが、経済産業省は、長年、「太陽光発電は陽の出ている昼間しか稼働しない。天候にも左右されるので、安定しない電源だ」と主張してきた電力会社の言い分を鵜呑みにして、その稼働率を低く見積もり、需要の3%しか賄えないと想定したとみられる。
だが、年間の供給計画などと違い、夏の需給対策を作成する場合、太陽光発電の稼働率を低く見積もるのは間違いのもとだ。なぜならば、灼熱の太陽が照り付けて温度が上昇する夏の日の午後は、電力需要がピークになると同時に、太陽光発電の供給力もピークになるからだ。