昨年までは日本事業は宏之氏が、韓国事業は昭夫氏が統括してきたが、経営権の委譲をめぐる親子の争いは昨年末から始まった。武雄氏は今年1月、宏之氏をロッテHDの全役職から解任した。
宏之氏は巻き返しに出る。7月27日、武雄氏は宏之氏のほか長女の辛英子(シン・ヨンジャ、73)氏ら親族5人とチャーター便で韓国を出発し、午後に東京・新宿のロッテ本社に乗り込み、昭夫氏ら現経営陣の解任を求めた。昭夫氏は翌日の取締役会で反撃。武雄氏の代表権を外した。昭夫氏を追い落とすクーデターは1日で失敗した。
武雄氏が、自身が解任した宏之氏となぜ組んだのかは不明だが、宏之氏は8月2日、KBS(韓国放送公社)のインタビューで自身が父親の逆鱗に触れた原因を語った。
「昭夫氏は7月8日、父・武雄氏に呼び出されて叱責された。昭夫氏の兄、宏之元ロッテHD副会長は番組のインタビューで『父は弟をたたいた』とまで言った。叱責した理由は『なぜ中国で1兆ウォン(約1060億円)もの赤字を出したのか。なぜ(それを)報告しなかったのか』というものだった」(8月4日付朝鮮日報日本版より)
ここで昭夫氏は、父親と決別することを決意する。7月15日、日本のロッテHD代表取締役となり、韓国ロッテグループの社長団会議を強行した。宏之氏は7月30日付日本経済新聞で、こう語っている。
「昭夫氏が日韓両方の経営を見るという新聞記事が出たが、父は全く知らなかった。そこで18日に、昭夫氏に日本のロッテグループの役職解任を指示したが、昭夫氏は父に顔を見せ(にも来)ず辞めもしなかった。父は無視されたことに怒り、『自分で直接、申し渡す』と来日した。私が連れてきたのではない」
そして、宏之氏は8月17日の株主総会で「昭夫氏ら全取締役の入れ替えを提案する」と発言した。8月17日の株主総会は父と長男のグループと、次男の直接対決の場になるはずだったが、武雄氏は株主総会を欠席。一転して矛を収めるかたちになった。