政府は保有株を高値で売るために親子上場を強行?
政府は、保有する日本郵政株を高値で売却するために、日本郵政グループの親子上場を強行し、フルに活用した、と指摘されている。もともとは持ち株会社、日本郵政の単独上場を計画していた。だが、東日本大震災が発生し、大震災の復興財源として4兆円を日本郵政株の売却で確保する必要に迫られた。3社の親子同時上場は過去に例がない奇策だった。
「株式の売り出しの際に、金融2社の評価が日本郵政の株価にも反映される。これが、3社が適正に評価される最上の方法」と、政府は力説した。低収益の郵便事業を抱えているため、日本郵政の成長は期待薄だ。そのため株価は上がらない。政府が想定する価格を下回った水準で売却すれば、復興財源に穴があく。計画通りに日本郵政株を売却するには、株価を高値に保たなければならなくなる。そこで、ゆうちょ銀行とかんぽ生命を抱き合わせて3社を同時上場させたのだ。金融2社が牽引して、日本郵政の株価を高くするというシナリオを描いた。
15年と17年の2回にわたり、日本郵政株を発行済み株式ベースで43%分をすでに売却し、2.8兆円を得た。郵政民営化法で義務付けられた「22年度までに4兆円」を調達するには、1.2兆円が絶対に必要となる。
政府は9月にも、保有する日本郵政株を追加売却する予定だった。保有比率を現在の57%から、郵政民営化法が定める下限となる3分の1超まで下げ、同法に基づく売却を完了することになっている。
保有する25億株余りの日本郵政株のうち、最大10.6億株を売り出す。1.2兆円を調達するには、売り出し株価1132円が最低ラインとなる。だが、8月13日に一時、994円の上場来安値に沈んだ。追加売却を発表した4月9日の株価(1286円)より23%安い水準。最低ラインの株価を大きく下回ったままだ。
財務省は第3次売却で「復興財源1.2兆円を確保したい」としてきた。だが、子会社かんぽ生命による不祥事で株価は急落。政府内には「年内売却は無理」との見方が急速に広まり、復興財源の調達にも暗雲が漂う。
グループの経営を複眼的視点で見直し、成長戦略を立てなければ株価は反転しない。日本郵政の今のトップ、長門正貢社長は問題意識が希薄で動きも鈍い。年度内(2020年3月末まで)に日本郵政株を売り出せるのだろうか。
(文=編集部)