日産自動車に43%出資している仏ルノーは、日産にとって実質的な親会社に当たる。日産は東京市場、ルノーはパリ市場に上場しており、国際的な親子上場といえる。利益相反の問題を抱えており、資本関係の見直しとルノー優位の体制からの脱却が図れるかどうかが焦点となる。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は8月2日、ルノーが日産に対する出資比率の引き下げを検討していると報じた。欧米大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との経営統合交渉の再開に向け、日産側の支持を得るのが狙いである。6月にルノーとFCAの統合交渉が破談した直後、出資比率見直しの協議を、限られた人数で始めた。同紙によると、「ルノー側は日産に対し、FCAとの統合を容認できる条件を示すよう要請。協議は早ければ9月にも暫定合意する可能性がある一方、年末までもつれ込むこともあり得る」という。
ルノーとFCAの統合交渉は、FCA側がルノーの大株主である仏政府の干渉に反発したことや、日産の支持が得られなかったことなどから破談した経緯がある。
日産はゴーン元会長を追放
日産はカルロス・ゴーン前会長を追放し、西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)主導の新体制に移行したが、出足からつまずいた。
6月25日に開いた定時株主総会では、会社側の議案すべてが可決された。ただ、日産が企業統治強化の要と位置づける指名委員会等設置会社への移行にルノーが強く反発し、一時は定款変更の議案に対して棄権する意向を示し、議案が否決されかねない事態に陥った。日産側が譲歩し、委員会ポストをルノーの2人の首脳に差し出した。
指名委員会等設置会社とは、役員人事を決める「指名」、役員報酬を定める「報酬」、事業運営や決算書類が適切かを調べる「監査」の3つの委員会を設け、それぞれの委員会で社外取締役に大きな権限を持たせる、企業統治の面で厳しい仕組みだ。
「ルノーの代表2人がともに議席を持てるなら賛成してもいい」
スナール会長はパリで開いたルノーの株主総会でこう発言した。6月12日のことだ。委員会のポストを渡さなければ議案を棄権するとして、西川社長に揺さぶりをかけた。ゴーン氏とは対照的にスナール会長は一見ソフトに見えるが、フランスでは百戦錬磨のネゴシエーター(交渉人)として知られる。西川社長はゴーン氏に認められて社長に引き上げられた人物。スナール会長のほうが役者としては一枚も二枚も上手のようだ。日産は指名委員会にルノーのスナール会長、監査委員会にティエリー・ボロレCEOを迎えることを余儀なくされた。