ただでさえ東京株式市場は中国経済の先行き不透明感や、米国の利上げ動向などを警戒し、8月以降大幅安に売り込まれている。足元では大きく戻す局面もあるが不安定な状況だ。需給面では外国人投資家の売りが目立つなど、世界の株式市場から資金が流出している。こうしたなかでの郵政3社の上場は、国内株式市場の需給悪化に拍車をかけるとの声が出ている。
日本郵政だけでも1987年のNTT以来の大型上場を、証券界はもろ手を挙げて歓迎している。当時のNTT株はバブル相場での上場となり、新規の個人投資家づくりに役立ったうえ、株式市場全般の活性化にも一役買った経緯がある。業界としては「夢よもう一度」と考えても不思議ではない。
しかし、当時と今とでは地合いが違ううえ、成長のイメージを描けたNTTと、成熟してしまっている郵政3社とでは、根本的に評価が違うと見るべきだろう。
需給に大きな影響
また、大型上場は他の上場企業株の需給に影響を及ぼす。日本郵政だけで時価総額は7~8兆円、3社合計では12兆円規模が想定される。全銘柄の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)をベンチマーク(投資基準)としている機関投資家や、先物を使って利益をあげようとする裁定取引業者は、ポートフォリオ(運用資産の組み合わせ)を時価総額に合わせて組み入れているため、大型IPOは当然新規の買い対象になる。一方、運用資産は一定なので、買付資金は他の銘柄を売却することで調達することになる。その額は「現在の推計で、ざっと1.4兆円というところではないか」(裁定業者)といわれる。
上場日である11月4日には、こうした動きが出ることが想定されるうえ、郵政3社のTOPIXへの正式採用は今年12月末で、この時点で正式に「郵政3社買い、時価総額の大きい上場企業株式売り」のポートフォリオ入れ替えが行われる。
現在の時価総額上位はトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、NTT、NTTドコモ、JTが上位5社で、これにKDDI、ソフトバンクなどが続く。ただでさえ、株式市場が荒れているのに、こうした銘柄には機械的な売りが出て、株価の下押し要因になる。