セブン-イレブン・ジャパンの7月のチェーン全店の売上高は、前年同月比1.2%減だった。前年割れは9年4カ月ぶり。
7月の既存店売上高も3.4%減で、こちらは6月に続いて前年実績を下回った。既存店客数は5.6%減で客足が鈍った。
これまでは既存店売上高が減っても、新規出店が全店売上高を押し上げてきた。7月末の店舗数は2万990店と前年同月末と比べて2.7%増えたが、新規出店数の抑制もあって既存店の落ち込みをカバーしきれなかった。
【セブン-イレブン2020年2月期月次営業実績】(前年同月比、%)
※既存店売上高、客数、客単価、チェーン全店売上高
3月 0.1、▲1.7、1.8、3.0
4月 0.2、▲2.5、2.8、2.7
5月 0.7、▲1.9、2.7、2.9
6月 ▲1.3、▲3.8、2.6、1.7
7月 ▲3.4、▲5.6、2.3、▲1.2
(資料:セブン&アイ・ホールディングス月次営業情報、▲はマイナス)
セブンは7月の全店売上高がマイナス成長となったことについて、7月中旬まで関東地方を中心に長雨が続いたことなど天候要因だとしている。猛暑だった昨年に比べ、飲料やアイスなどの販売が振るわなかったという。
では、同じ条件下のライバル各社の7月の営業実績はどうだったか。
ローソンの既存店売上は前年同月比2.3%減、ファミリーマートのそれは1.7%減だった。セブンは3.4%減で相対的に落ち込みが目立つ。
セブンはローソンやファミマに比べて営業力・集客力が強いとされてきた。18年度の1店舗の1日当たりの売上高(日販)は、セブンが65.6万円、ローソン53.1万円、ファミマ53.0万円。セブンはほかのチェーンと比べて10万円以上の差をつけていた。抜群の営業力を誇るはずのセブン全店の売り上げが前年割れとなった。長雨の影響としているが、スマートフォン決済サービス「7pay(セブンペイ)」問題が影響していることは否定できない。
客数の減少が目立っているのが何よりの証拠である。6月は3.8%減、7月は5.6%減と減少幅は拡大した。「ペイペイ」などスマホを使った決済サービスで大幅還元施策が相次いで導入されるなか、セブンは6月まで大手コンビニのなかで唯一対応していなかったことが響いた。
7月1日に始めたセブンペイは、低迷が続く客数をテコ入れするための目玉の施策だったが、出足からつまずいた。利用者からの問い合わせにより7月3日に不正利用が発覚。「2段階認証」と呼ばれるセキュリティ対策の不備が明らかになり、システムの信頼性が低下。7月中はチャージ(入金)の中止や新規登録の停止などの措置を続けたが、8月1日、セブンペイを9月末に終了すると発表した。
セブンペイの終了はセブンの業績にストレートに響くことになる。既存店売上高が振るわないなか、10月の消費増税に合わせて始まるキャッシュレス決済のポイント還元の手段のひとつを失うことになるためだ。顧客がライバル店に流れることは避けられないだろう。
井阪セブン&アイ体制は失策続き
コンビニ各社は、人手不足に伴う人件費の高騰でフランチャイズチェーン(FC)加盟店の経営難が深刻になっている。19年に入ってからセブン&アイは、この問題をうまく収束させることができず、失点を重ねた。
2月にセブン加盟店が営業時間の短縮を強行。24時間営業をめぐる問題が表面化した。この問題が尾を引いて、セブンは社長交代に追い込まれた。セブン&アイは4月、傘下のセブンの古屋一樹社長を退任させ、後任に永松文彦副社長を昇格させた。24時間営業問題に伴う、事実上の更迭である。
FCオーナーの反乱は過去にもあった。その際は、「コンビニ生みの親」と呼ばれる鈴木敏文元会長(現・名誉顧問)が迅速に対応し、上手に火消しをしてきた。16年に鈴木氏が突然、失脚。カリスマなき後、セブン&アイの井阪隆一社長や、セブンの古屋社長などによる集団指導体制に移行してから、グループ内で不協和音が目立ってきた。
鈴木氏が失脚したのは、井阪氏を解任しようとして返り討ちに遭ったもの。一方、古屋氏は、“ミニ鈴木敏文”と呼ばれるほどの鈴木経営哲学の信奉者。井阪氏と古屋氏は水と油だった、といわれている。
24時間営業問題を泥沼化させた責任を問い、セブン&アイの経営陣は古屋氏のクビを取ったのである。24時間営業問題に解決のメドが立たないなか、キュッシュレス社会を見据えた新サービス、セブンペイで大失敗。スマホ決済サービスで完全に立ち遅れてしまった。
井阪社長は、どうやってセブン&アイを立て直すのか。次の手が待たれる。
(文=編集部)