USJの入場者は増加を続けている。そこで、ゴールドマンは株式上場後に売り抜けるより、コムキャストに売却したほうがリターンは大きいと考えたようだ。ゴールドマンは今回の売却でUSJ株式のすべてを手放すわけではない。今後もユー・エス・ジェイ株式を保有する。新経営陣が上場にゴーサインを出せば、そこでまた利益を得ることができる。
コムキャストは米最大のケーブルテレビ、コムキャスト・ケーブルを運営し、年間売上高は8兆4000億円。5年前に映画・テレビ番組制作、テレビ局運営、テーマパーク事業のNBCユニバーサルを買収した。USJは「ユニバーサルスタジオ・ハリウッド」などテーマパークを手掛けるNBCユニバーサルとライセンス契約を結んでいた。NBCユニバーサルは来園者が増えているUSJに着目したわけだ。
経営不振に陥った後、USJはハリウッド映画一辺倒のやり方を見直し、ハローキティやスヌーピーなどのキャラクターや人気アニメの妖怪ウォッチなど、多彩なコンテンツを揃えた。これが人気を博し甦った。退任することになったグレン・ガンペル社長は「カジノはもちろん、さまざまなビジネスにチャレンジしたい」と語り、テーマパーク事業にこだわらない姿勢をみせていた。沖縄に新しいテーマパークを建設する構想も打ち出した。
沖縄進出へ影響か
ガンペル氏は今年3月18日、沖縄県に新たなテーマパークをつくる計画を表明した。建設費を調達するため東証へ再上場することに踏み切った。再上場と第2テーマパーク建設はワンセットだった。
USJの第2テーマパーク建設予定地は、沖縄県北部に位置する本部町の国営「海洋博公園」。同公園は75~76年に開催された沖縄国際海洋博覧会の跡地で、東京ドーム16個分の敷地に水族館や植物園がある。
「この計画は政治案件である。政府が沖縄振興策の柱に据えているのが、外国からの観光客を呼び込むためのカジノと那覇空港の第2滑走路の整備だった。ただ、これは沖縄県知事が米軍基地の名護市辺野古沖への移転を受け入れることが前提条件になる。カジノ法案の成立の見通しが立たないため、次善の策として浮上したのが第2テーマパーク構想だ。USJにとって、本命はカジノ。テーマパークは当て馬でしかなかった。コムキャストから送り込まれる新しいCEOが、政治がらみの案件に首を突っ込むとは考えにくい。USJの経営権を米国企業が握ったことにより、USJの沖縄第2テーマパーク構想は白紙撤回される可能性が大きくなったとの見方がもっぱらだ」(経済記者)
突然の買収の余波は、思わぬところまで波及しているようだ。
(文=編集部)