東京ディズニーランド(以下、TDL)および東京ディズニーシーからなる東京ディズニーリゾート(以下、TDR)が大変なことになっているという。
「学生限定 春のキャンパスデーパスポート」(通常5500円が4900円)などで春休みの学生を中心にキャンペーンを展開しているうえに、ファミリー層を中心にディズニー映画『アナと雪の女王』をテーマにした新グリーティングイベント「アナとエルサのフローズンファンタジー」も大好評。4月から1デーパスポートが500円値上げされるのを前にした駆け込み需要もあって、土日ともなれば入場制限がかかるほどだ。
「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/3月7日号)でも『ディズニー値上げは妥当か 大混雑で見える“ほころび”』というニュースコラムを掲載している。
殺到するゲスト(顧客)に、アトラクションだけでなく飲食店でも、店側が対応しきれず長い行列ができる。さらにレストルームの数も圧倒的に足りず、“トイレ渋滞”も深刻な状況だ。
TDRを運営するオリエンタルランドに対して、キャスト(従業員)の労働環境を改善するように要望しているオリエンタルランド・ユニオンは、TDRの現状をこのように話す。
「現在は、殺到する来場者に対し、運営側は利益を最大化しようと人件費をギリギリまで圧縮しているために最低限のキャストで対応しています。そのため、キャストは疲弊してサービスが低下しています。飲食や物販のレジも稼働するのは最低限で、ゲストはそのための行列に並ぶしかなくなっている状況です。アトラクションにも飲食店にも並ぶという異常事態になっています」
常に行列の飲食店
そこで今回、筆者が実際にTDLに行ってみた。雨が降り、臨海部特有の風も強めという悪条件の平日だったが、事前の天気予報は「晴れ」だったことから、多くのゲストが来場していた。
行列ができるのはアトラクションだけではなく、ポップコーンやチュロスなどの食品販売店でも長時間待たなければならない。傘を差しながらも途切れない行列が続く。チュロスといえば3月5日、メープルチュロスに金属のネジが混入していたことが明らかになり、現在メープルチュロスの販売を中止している。それにもかかわらず、午前中からチュロスを待つ行列は途切れない。
風が強く寒い。ランチタイム前に飲食店に入ろうとするも、ワールドバザール内のレストランはすべて行列。比較的大きいレストランの1つ「パン・ギャラクティック・ピザ・ポート」内は大混雑で中に入れない。席数の多い「トゥモローランド・テラス」では中に入ることはできたものの、レジ前の長い行列に並ばなければならない。さらに商品を買っても、すでに満席で食べる場所を確保するのも困難だ。外の雨がやむまで暖かい店内で時間を過ごそうとする学生、立ち食いする若者、通路にレジャーシートを広げて食べ出すファミリー、我慢できずに泣き出す子供も多く、険悪な雰囲気が漂っている。
レストルームへ足を運ぶと、女性用レストルームに並ぶ行列も、とてつもなく長い。男性用はそれほど並ばずに済むが、園内どこへ行っても行列、行列、また行列なのだ。
レストランは、ランチタイムが終われば余裕があるかと思いきや、客が注文をするレジは3つのラインのうち1つが休止してしまうこともあって、行列はますますひどくなっていた。
営業を休止したレジ周辺には広いスペースができるため、ゲストはレジャーシートを広げ始めた。シートの上でぐったりとしている家族連れは、夕方の「アナとエルサのフローズンファンタジー」まで待機するようだ。
雨がやんだ夕方にはレストランの混雑も緩和したが、何をするにも行列に並ばなければならない「夢の国」には疑問を禁じ得ない。
最近、TDRだけでなく、オリエンタルランドは株式分割も話題になっている。2月24日、オリエンタルランドが1株を4株にする株式分割を発表。分割により株式数を増やして流動性を高めるのが狙いだ。4月1日より株式分割を行うが、この発表を受け、最低購入価格298万6000円だった株価は高騰。3月11日時点で358万円にまで約20%上昇している。今後も株価の上昇が期待されるうえに、配当金も2014年度は前期より20円増配となる一株当たり140円(予想)と、毎年のように増額しており、投資家にとってはおいしい銘柄に違いない。
ゲストが並べば並ぶほど、投資家にお金が転がり込む仕組みなのかもしれない。
(文=松井克明/CFP)