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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

スゴすぎるぞ!MRJ、初の国産ジェット機の全貌 世界の「空」を変える巨大な衝撃

文=牛場春夫/航空経営研究所副所長

 この結果、搭乗時間が長引き、定時性維持を困難にさせるどころか、航空機稼働時間の低下にも影響している。航空会社にとって、いかに飛行場の折り返し時間を短縮し、航空機の稼働時間を目一杯向上させるかは採算性向上の鍵となるのだから、この問題を放っておくわけにはいかない。

 米国でウルトラLCC(ULCC)と呼ばれているスピリット航空などは、座席下部に収納可能な小さな身の回り品の手荷物1個のみを無料とし、それ以外の機内持ち込み手荷物が発生する搭乗客からは30ドル以上を徴収しているくらいだ。MRJを選定したリージョナル航空会社は、大型オーバーヘッド・ビン装着機を導入して、この問題に対処しようとしているのだろう。

欠かせない、空港の24時間運用

 米国と違って日本では、リージョナル路線網がほとんど育っていない。東京や大阪などのハブ空港を発着する幹線網が、日本の航空路のほぼすべて(90%近く)を構成する。日本でリージョナル国内路線が育たない理由には、南北3500キロの細長い日本列島の地理的問題や、三大都市圏に日本の全人口の50%以上が集中しているといった背景があるが、そのほかにも、採算性の良いリージョナルジェット機の不在が原因となっているといわれている。採算性の良いMRJが就航すれば、日本でもローカル空港とローカル空港をつなぐリージョナル路線がきっと開設されるに違いない。

 日本発着の国際線リージョナル路線網も、国内線同様にあまり育っていない。一衣帯水の地理的関係にある日韓と日中路線では、ローカル空港発着の路線網が多く存在する。特に日中間では、最近の訪日中国人旅行者の著しい増加に後押しされて、日本の約20都市と中国の約30都市を結ぶ100以上の路線網が存在し、週間1000便以上が飛んでいる。8月初旬の中国経済の陰りが露呈した後でさえも、日中の航空会社は、新規路線の開設を含む供給拡大に余念がない。

 これらの日中路線のかなりの部分が、日本発着の本格的リージョナル国際線路線網となるに相違ない。最近初飛行に成功した中国国産機のリージョナルジェットARJ型機も、型式証明取得に時間がかかっているものの、MRJと競ってこの路線に参入してくるのは時間の問題だ。

 日本の国内線や国際線における本格的リージョナル路線網が構築されるためには、もう一つ大きな条件が存在する。空港の運用時間の問題だ。日本の約100空港で24時間運用空港となっているのは、たったの5空港(羽田、中部、関西、北九州、那覇)にとどまる。航空会社にとって航空機の稼働時間は、命取りとなるほど採算性を左右する重要な問題だ。MRJ就航に伴う本格的リージョナル路線網の構築には、空港の24時間運用が欠かせない。
(文=牛場春夫/航空経営研究所副所長)

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