広島空港は、その名称とは異なり、広島市内ではなく三原市(旧豊田郡本郷町)にある。山の中を切り開いたため、1993年の開港当初から霧による視界不良が頻繁に発生し、年間の欠航は75便にも及んだ。計器を改良することで対応し、霧が原因の欠航は減少したが、今回のアシアナ航空機事故によって、その計器が壊れてしまった。
そのため、事故後の4月19日には発着予定の全58便が欠航、翌20日も57便が欠航した。広島県の高垣広徳副知事は、国土交通省を訪ね、早期の復旧を要請した。国交省側は「梅雨までに簡易計器の設置、12月ごろ完全復旧」と説明した。
ところが、地元ではまったく逆の情報がささやかれている。
「計器などを完全復旧させるまでに、広島空港自体の閉港が決まってしまうのではないかという話が流れています」
そう明かすのは、地元の商工会議所関係者だ。
「広島空港は、市街地へのアクセスがリムジンバスしかないという不便な点がまったく改善されず、『日本一不便な主要空港』といわれてきました。アシアナ航空機の事故前から、利用者離れが深刻だったのです」
広島~東京間の航空機と新幹線のシェアは、2010年に「46(航空機)対54(新幹線)」となっている。羽田~広島が1時間25分の航空機に対し、JR西日本は東京~広島が3時間50分の新型のぞみを投入したが、これが功を奏している。
広島空港から市内へのバスは、旧広島市民球場のある大通りバスセンターまで約50分かかる。しかも片道1340円で、東京~浜松町~羽田第2ターミナルの637円の2倍以上、福岡空港~天神260円の5倍以上も高い。このため「出張費がかかりすぎる」と嫌われてきた。関係者が明かす。
「危険、不便の元凶は、地元の某国会議員です。広島市西南部の旧広島空港を沖合に移す計画を強引に覆し、選挙区に利益誘導を図りました。この経緯を知る幹部が多いため、国交省では広島空港の対策に本腰を入れられないのです」
広島商工会議所の深山英樹会頭は、「広島空港でなく、岡山空港経由で広島中心部へお越しになる方もいます。アシアナ航空機事故で、広島経済に大きな影響が出るのではないでしょうか」と危機感を募らせる。商工会議所は、復旧に向けて県と動きだしているが、打開策は簡単に見つかりそうにない。
(文=編集部)