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郵便、存続の危機、ビジネスとして限界…配達は週2日・郵便ポスト削減も現実味

文=Business Journal編集部、協力=松原聡/東洋大学教授
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日本郵便の公式サイトより

 日本郵便の郵便事業が存続の危機にさらされている。同社は2023年度の郵便事業収支の営業損益が896億円の赤字となったと発表。赤字は2期連続。26年以降も赤字が続く見通しとなっており、民間企業ゆえに事業の継続は難しくなってくる。07年の民営化から17年が経過し、日本郵便の経営は岐路に立たされている。

 日本郵便は25日、「郵便事業の収支の状況(2023年度)」を発表。国内郵便はデジタル化の進展に伴う郵便物の減少などにより前年比701億円(5.9%)の減収となり、918億円の赤字、国際郵便は米国・英国あて通常郵便物の一部引受再開の影響などにより前年比41億円(5.8%)の増収となり、22億円の黒字となった。売上が落ちる一方、集配運送委託費の増加などにより営業費用は25億円(0.2%)増加し、営業損益は前年比685億円の減益。22年度の211億円の赤字から赤字幅は大きく広がった。

 足を引っ張るのが国内郵便事業だ。国内普通郵便の営業収益(売上高に相当)は21年度からの2年間で859億円減少しており、減少は続くとみられる。

 一方、日本郵便の業務区分別の収支をみてみると、第1号(郵便物、印紙など)と第2号(通常・定額・定期貯金、為替・振替など)は赤字だが、第3号(養老・終身保険)は営業損益ベースで78億円の黒字、第4号(荷物、不動産、物販、投資信託、がん保険など)は1106億円の黒字を確保。全事業では37億円の赤字となっている。

 第1号の郵便物に該当するのは、第1種~第4種(封書、ハガキ、通信教育など)、特殊取扱(内容証明、書留など)、国際郵便など。第4号の荷物に該当するのは「ゆうパック」などだ。

「第1号の『郵便物』は郵便法でユニバーサルサービスに指定されており、全国一律の低額料金でくまなく配達することが義務付けられている。それにより、日本郵便は民間企業でありながら、どんなに赤字になっても郵便局網と人員を維持して郵便事業を続けなければならず、同事業の赤字は日本郵便の責任とはいえない。郵便事業が受けている税金面や交通規制面でのさまざまな優遇措置を受けていない第4号の荷物をはじめとする事業は1000億円を超える黒字となっており、自由にできない郵便事業を抱えながら全事業でみると37億円の赤字にとどまっているというのは、悪くはない数字といえる」(全国紙記者)

 ちなみに日本郵便が扱う投資信託は、ゆうちょ銀行から販売委託を受けているもので、がん保険はアフラック生命保険から販売委託を受けているものだ。郵便局員はいう。

「郵便局員は準公務員という身分だが、一般局員の給料は低い。ラクな仕事だと思われがちだが、各種金融商品や年賀状の販売ノルマは結構厳しく、ラクな仕事ではない。また近年はネット通販の拡大で荷物配達の量が増えており、毎日さばくのが大変。その一方で、一通数十円~数百円の郵便もやらなければならず、純粋に企業のビジネスとしてみた場合に現状のままでは無理があると感じる」

年賀状の減少が大きな要因

 郵便事業が赤字になっている原因について、小泉純一郎政権下で郵政民営化の基本方針を検討した郵政懇談会で委員を務めた経験を持つ、元郵便事業株式会社取締役で東洋大学教授の松原聡氏はいう。

「大きな要因は年賀状の減少です。郵便事業は一通あたり数十円で1軒1軒配達しなければならず、私が郵便事業株式会社の取締役を務めていた15年ほど前の当時でも、年賀状以外は赤字で、年賀状によって全体でなんとか黒字を維持するという状況でした。その年賀状が近年、大きく減少してきたことで赤字に陥ったのは当然です。以前は郵便局員に年賀状の高い販売ノルマを課し、売れ残ると局員が自腹で購入するという行為が横行していましたが、定年退職を迎える人が増えて一人あたりの年賀状を送る数が減り、さらに人口減少に加えて若い人には年賀状を送るという習慣がないため、どのような手を打っても年賀状の減少を食い止めることは無理です。

 また、SNSの普及などにより手紙の利用機会が減り、コミュニケーションツールの主要マーケットがデジタルに移行している点も赤字の要因です」

ユニバーサルサービスの定めを残しながら郵便事業を維持するための抜本的な改革

 郵便事業の黒字化は可能なのか。

「郵便事業は人件費率が高いため合理化・効率化が難しく、黒字化は相当難しいと考えられます。郵便事業は公企業でも株式会社なので赤字が続けば破綻せざるを得ず、かといって税金で補てんすることも難しいです。黒字化のためには大幅に人件費を削減する必要がありますが、たとえば配達の頻度を週2回くらいにしてポストの数も減らすことで、人件費を削減することは可能です。サービスは低下することになりますが、郵便事業を完全になくすことができないのだとすれば、やむを得ないという判断もあるでしょう。これらの取り組みは郵便法を改正すれば可能ですし、郵便法上のユニバーサルサービスの定めを残しながら、なんとか郵便事業を維持するための抜本的な改革を検討すべき時期にきています。

 ただ、こうした法律の改正では行政により抵抗も予想されます。かつて信書の送達事業について民間事業者の参入を可能するために信書便法が制定される際、私がヤマト運輸の経営者に直接話を聞いたところ、約1000通を一つの定型パックに同封することで東京から札幌の配達拠点まで1通あたり1円のコストで送れるということで、参入に前向きな姿勢を示していました。ですが総務省は日本郵便の既得権益を守るために、事業を手掛ける民間事業者に対して郵便ポストと同数レベルのポストを設置して、かつ毎日回収することを義務付け、新規参入が事実上できないようにしました。結果的にヤマトは参入を断念し、現在でも信書便事業を行う事業者は事実上、日本郵便以外ありません。

 こうした法律を改正して民間事業者の参入が増えれば、新たなマーケットやサービスが生まれ、結果的に日本郵便の事業拡大にもつながる可能性もあるのではないでしょうか」(松原氏)

(文=Business Journal編集部、協力=松原聡/東洋大学教授)

松原聡/東洋大学経済学部総合政策学科教授、博士(経済学)

松原聡/東洋大学経済学部総合政策学科教授、博士(経済学)

桐朋中学校・高等学校・筑波大学・筑波大学大学院を経て
1984年 東海大学政治経済学部経済学科助手
1994年 東洋大学経済学部助教授(准教授がまだ助教授と呼ばれていた時代です)
1996年 東洋大学経済学部教授、現在に至る(勤務28年の大(笑)ベテランです)
2015年4月 東洋大学副学長(2020年3月まで)
小泉純一郎内閣、郵政懇談会委員。竹中平蔵総務大臣、通信放送懇談会座長。郵便事業会社取締役。日本経済政策学会副会長、日本公共政策学会会長などを歴任。
松原聡のプロフィール

Twitter:@matsubara_s

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