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20~30代を希望→人材派遣会社「無理です」…派遣社員の8割は40代以上?

文=Business Journal編集部、協力=内藤亮/株式会社熱狂スタイル代表取締役
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「gettyimages」より

 人材派遣会社が顧客企業から20代の派遣を依頼されるケースは珍しくないが、現在では登録者が10人いたら7.6人、約8人は40代以上のため、そのような要求に応じるのは無理になってきているというSNS上の投稿が話題を呼んでいる。果たしてそのような実態はあるのか。また、人材派遣では今、何が問題となっているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 1986年の労働者派遣法の施行により誕生した人材派遣という形態は、バブル崩壊を経て1990年代後半から企業側のニーズ拡大に伴い一気に普及。2000年代には「ハケン」という言葉が定着する一方、正社員との待遇差などさまざまな問題も顕在化し、『ハケンの品格』(07年/日本テレビ系)という連続テレビドラマもつくられるなど社会的関心の高いキーワードとなっていた。その後、製造業や医療機関への派遣が解禁されるなど規制緩和が進んだが、2010年代に入ると規制強化の流れに転換。15年には派遣法改正により、派遣先の同一の部署における派遣受入可能期間が最大3年となる「3年ルール」が導入され、20年には「同一労働同一賃金」が導入されたことも記憶に新しい。

 総務省の統計「労働力調査」によれば、02年から23年までの21年間で派遣社員の数は43万人から150万人へ増加しており、増加傾向にある。また、23年7~9月期の雇用者のうちの派遣社員が占める割合は3%となっており、正社員(63%)、パート・アルバイト(26%)よりぐっと少なく、契約社員・嘱託(7%)より少ない。

 現在の一般的な派遣社員と派遣元企業、派遣先企業の関係はこうだ。派遣先企業と派遣元企業は業務内容や労働条件、時給などを定める派遣契約を結び、派遣社員は派遣元企業と雇用契約を結び、給料は派遣元企業から支払われる。そして派遣社員は派遣先企業から業務の指示を受け、労働を提供するというかたちだ。ちなみに契約社員は勤務する企業と直接契約を結ぶ形態であり、休日休暇や福利厚生などは勤務先企業が定める内容が適用されるケースが多い。数カ月~年単位の契約期間ごとに更新し、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、労働者からの申込みにより無期労働契約に転換される無期転換ルールが存在する。

若い派遣社員を確保することは非常に困難

 そんな人材派遣の現実を伝えるSNS上での投稿が一部で話題を呼んでいる。人材系の会社に勤務しているというX(旧Twitter)ユーザは以下のようにポストし、さまざまな反応が寄せられている。

<派遣先から「紹介者は30代まで」と言われたから、もうそれ無理ですって説明する資料を作ってて、そしたらすごい怖くなってきた…総人口1億2000万、そのうち20歳以上は1億人。 その中で50代以上は5800万。40代以上でカウントすると7600万となり「20歳以上10人のうち7.6人は40代以上」となる…> 

<その2.4人の中で経験だのスキルだの選んでいたらもう絶対に決まらないって。人口比率的に無理ゲーだって。その2.4人はより良い条件のところに就職するから派遣では無理だって。「20代30代の良い人材を派遣で雇うことは奇跡に近い」という絶望的な資料の完成さ…>

 このような実態はあるのか。人材派遣会社の経営と営業を11年経験し、これまで3000名を超える転職支援をしてきた、「退職代行やめたらええねん」の代表 内藤亮氏はいう。

「人材派遣を求める企業側は、若くて柔軟性があり即戦力になる20代を求めるケースが多いです。一方、派遣社員として働く人のうち、20代は圧倒的に少なく、肌感覚としては全体の15~20%ほどでしょうか。タイミング良く20代の求職者が見つかったとしても、すぐに転職先が決まってしまうので要望通りの派遣社員を確保することは非常に困難です。そのため、人材派遣会社側は『20代ではないですが、こういうスキルやお人柄の人材がいるのですが、いかがでしょうか』と代替案を派遣先企業へ提案して交渉することが営業現場では多いのが現実です。こうした傾向は今に始まった現象ではなく、10年ほど前から続いている状況です。」

 20~30代が少ない理由は何か。

「日本の世代別人口構成比的に20代が減ってきているという背景に加え、20代では正社員志向の人が以前と比べて増えているという点もあるでしょう。派遣社員のうち3~4割ほどを占める40代の方々が20代だった頃は、派遣社員は特定分野のエキスパートでスキルが高く、時給も高く残業もないというイメージがあり、今とくらべてステータスが高く、積極的に派遣社員という働き方を選ぶ人も少なくなかったです。当時20~30代で派遣社員だった人が、そのまま今も働き続けているというのが現状です。一方、現在の20代は正社員になることをベースに考える傾向が強いです。そのため、人材派遣会社は若い求職者を集めるのが非常に難しくなり、多額の集客費や固定費を投資してしまうなどして、派遣先企業の要望に応えられず倒産するケースも出てきているのが現状です」(内藤氏)

派遣社員として働くメリット

 では、派遣社員として働くメリットは何か。

「たとえば数年後に起業を考えている、ワークライフバランスを大切にしたい人などにとっては、労働時間・就業期間・業務内容が基本的に限定されているため、希望する柔軟な働き方が実現できるかもしれません。ただ、現実的には職歴が派遣社員だけになってしまうと日本の労働市場においては厳しい評価をされる傾向が未だに強いため、キャリアアップを望む方は可能な限り、正社員でのキャリアを歩んでいかれるのがよいかと考えます。いずれにしても、自分自身がどのような生き方をしたいかによってキャリアを取捨選択していくことが大切だと考えています」(内藤氏)

(文=Business Journal編集部、協力=内藤亮/株式会社熱狂スタイル代表取締役)

内藤亮/株式会社熱狂スタイル代表取締役

内藤亮/株式会社熱狂スタイル代表取締役

立命館大学法学部卒業。日本生命保険相互会社の勤務を経て、人材派遣会社の経営と営業を11年間経験。その後、株式会社熱狂スタイルを創業。テレビ出演とSNSで話題の「退職代行やめたらええねん」を運営。関西テレビ「newsランナー」毎日放送「よんチャンTV」ABEMA TV「ABEMA的ニュースショー」読売テレビ「かんさい情報ネットten.」など、多数のテレビ番組に出演。一般社団法人 人材ビジネス協会では事務局を務め、人材業界の発展にも尽力。大阪商工会議所会員。
退職代行サービス「やめたらええねん」

Twitter:@naito_nekkyo

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