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業務スーパー、異例のストで休業…社長が私的流用で経営悪化→社員解雇を策動

文=Business Journal編集部
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業務スーパー(写真の店舗は本文内容とは無関係)

「業務スーパー」の一部店舗が従業員のストライキにより無期限の休業に入るという異例の事態が起きている。労働組合側は、フランチャイズ(FC)店舗の運営会社の経営者が会社資産の私的流用などを行い、会社の破産と労働者の解雇を策動していることへの抗議だと主張。店舗入り口に組合が掲出した貼り紙には「ストライキ決行中!」「●●(編注:運営会社の代表者名)によるパワハラや不当労働行為に抗議しています」といった強い文言もみられる。大手小売チェーンでのストライキは近年では珍しいが、背景には何があるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 2000年に兵庫県三木市で1号店がオープンした業務スーパーは、22年には国内1000店舗を達成。積極的にメーカーを買収して生産能力を拡大させ、自社で企画・製造するオリジナル商品を拡大。国内に25拠点の食品加工工場を構え、さらに世界に約350の協力工場を持つことで圧倒的な低価格を実現し、急成長を遂げてきた。多くの店舗をフランチャイズ形式で運営し、業務スーパーは商品とノウハウの提供に注力することで低コスト経営を実現。運営元の神戸物産の業績も好調で、2023年10月期連結決算の売上高は前期比13.5%増の4615億円、営業利益は同10.4%増の307億円、経常利益は同6.7%減の300億円と、その成長に衰えは見えない。ちなみに神戸物産の時価総額は1兆円を超えており(18日終値ベース、以下同)、これは大手百貨店の高島屋(4789億円)を大きく上回り、三越伊勢丹ホールディングス(1兆2802億円)に迫る金額だ。

 業務スーパーで特徴的なのが、安価かつ大容量な商品の数々。その店名ゆえに「業者向けのスーパーで一般客も購入できる」というイメージが強いが、現在ではお客のうち業者と一般客が占める割合は1:9と一般客のほうが圧倒的に多いとされる。業務スーパーの人気を支えるのが、オリジナル商品だ。1Lサイズの紙パック入りデザート類や大容量の冷凍肉、お徳用レトルト食品などが多数、取り揃えられている。

組合側は労働者の雇用継続を前提とする「自主再建」を要求

 そんな業務スーパーで起きた今回のストライキ。対象の店舗は北海道の「すすきの狸小路店」「苫小牧店」「苫小牧東店」「室蘭店」「岩見沢店」「滝川店」「旭神店」の計7店舗。ストを敢行した東京東部労働組合は公式サイト上で、運営元会社の経営者が前述のような行動をとっており、組合側は労働者の雇用継続を前提とする「自主再建」を要求したものの、会社側は全面拒否したため無期限ストライキに突入したと主張。会社側は「経営ミスを労働者になすりつけ、最後まで労働者の雇用と生活を犠牲にしようとしている」として批判している。

 小売店の大規模なストライキといえば、昨年に西武池袋本店がストによる全面休業となった件が記憶に新しい。これはセブン&アイ・ホールディングスによる「そごう・西武」の米投資ファンドへの売却に反対するため、労働組合が主導したものだった。

 今回、業務スーパー7店舗でストライキを行っている東京東部労働組合の須田光照書記長に話を聞いた。

「まず会社資産の私的流用という点では、運営会社の社長は会社の経費で自家用の外車を購入したり、自宅の家事代行サービスを利用したり、私的にタクシーを利用したりしています。自身は毎月、数百万円の役員報酬を得ていながら、会社の資金繰りが苦しくなると従業員のボーナスを減額しようとしました。

 こうした事態を受けて従業員は今年2月に労働組合を結成しましたが、会社側は交渉の場で『資金繰りが悪化したので会社を倒産させたい』『そのため従業員を解雇したいので協力してほしい』と説明してきました。また、会社側は、破産管財人をつけて会社を買い取ってくれるスポンサー企業を探せば見つかる可能性もあると言っていますが、パート社員も含めて全従業員の雇用が守られる保証がないため協力するわけにはいきません。

 以前から実態としては経営や現場の運営などは従業員だけで行っているため、従業員側は役員に対し全員退任して経営を自分たちに渡してほしいと要求してきましたが、社長は拒否の姿勢を見せています。そして業務スーパーの事業自体は売上も利益も出ているにもかかわらず、役員の高額な役員報酬や社長の一存で続けている食品輸入事業の赤字に利益が吸い取られ、経営が悪化しています。そこで組合としてストライキに入ったという経緯です。

 ちなみに社長は組合との団体交渉が続いているさなかにも、個別の従業員に対して『ボーナスを上げるので協力してほしい』などとメールで連絡して働きかけを行っており、これは労働組合法に違反する行為です」

 このほか、社長による従業員へのパワハラ的行為も存在するという。

「社長は折に触れて従業員に対して『懲戒処分にする』と言ったり、女性職員について『あの人はトイレに行く頻度が多い』などと言ってプレッシャーをかけたりしていました」(須田氏)

神戸物産の対応が焦点に

 大手小売チェーン関係者はいう。

「一昔前は鉄道やバスなどの公共交通機関なども含めてストというのはしばしば起きていたが、近年では件数は減って珍しいものになった。ストという手段は顧客や多くの取引先に迷惑がおよぶこともあり、企業や店舗のイメージ悪化にもつながるため、企業側も労働者側も避ける傾向になっている。

 今回の業務スーパーの件は、組合側の主張を読む限り、会社側は労働者側の要求に応じる意向はなく、しかも倒産させる意向だということなので、会社の判断が変わる可能性は低いかもしれない。FC契約を結ぶ神戸物産が、この運営会社の経営になんらかの契約違反があるとして法的手段を取るのか、もしくはFC本部としてチェーン全体への信用維持の観点からなんらかの対応に乗り出すのかどうかが焦点となってくる」

 別の大手小売チェーン関係者はいう。

「会社資産の私的流用や計画倒産は違法性があると判断される可能性もあるので、会社側のそうした行為によって労働者が不利益を被ったのだとすれば、訴訟を提起して損賠賠償なりを求めるというのは当然の権利となってくる。また、一般的に大手の小売チェーンというのは、契約しているFC運営会社に深く関与してハンドリング・管理するものだが、業務スーパーほどの規模のチェーンで、なぜこのような事態が起きたのか、神戸物産のFC管理が適切だったのかは問われるだろう」

(文=Business Journal編集部)

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