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業務スーパー、半年で自主回収19商品の多さ…安売りと食品の安全維持の問題

文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト
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業務スーパー

 業務スーパーで販売される食品で商品回収の頻度が多いとの指摘が相次いでいる。今年4~9月の半年間で自社オリジナル商品は12商品、他社メーカー商品は7商品の計19商品に上り、店舗内に商品回収を告知する多数の貼り紙が掲示されている様子を撮った写真もSNS上に拡散され、さまざまな反応が寄せられている。回収の理由は、一括表示に記載のない添加物の検出や基準値を超える残留農薬の検出、虫体の混入、硬質異物の混入、賞味期限切れ食品添加物の使用などだ。業務スーパーは「徹底した品質管理システムのもと、すべての安全基準をクリアしたものだけが販売されています」として安全管理に力を入れていることを宣言しているが、なぜ商品回収が多く発生しているのか。専門家の見解を交えて検証してみたい。

 2000年に兵庫県三木市で1号店がオープンした業務スーパーは、昨年には国内1000店舗を達成。積極的にメーカーを買収して生産能力を拡大させ、自社で企画・製造するオリジナル商品を増やし、海外メーカーから直輸入する商品とともに圧倒的な低価格で販売することで急成長を遂げてきた。多くの店舗をフランチャイズ形式で運営し、業務スーパーは商品とノウハウの提供に注力することで低コスト経営を実現。運営元の神戸物産の業績も好調で、2022年10月期連結決算の売上高は前期比12.4%増の4068億円、営業利益は同1.9%増の278億円、経常利益は同10.4%増の321億円と、コロナ禍の巣ごもり需要増大という恩恵も受け、その成長に衰えは見えない。

 業務スーパーの人気を支えるのが、海外の工場・メーカーから直輸入した商品や、自社工場で製造するオリジナル商品だ。1Lサイズの紙パック入りデザート類や大容量の冷凍肉、お徳用レトルト食品などが多数、取り揃えられている。

「飲食店でもレトルト食品などを使用しているところは意外に多いが、個人店の店主からは『業務スーパーで買いたいけど、近隣の住民にレトルトを使っているとバレてしまいそうで、なかなか行きにくい』という声も聞かれる。一般客の利用が増えた一方で、業者が利用しにくくなったという面はあるかもしれない」(飲食店経営者)

企業として誠実な姿勢の裏返しという側面も

 食品の安全対策にも力を入れている。「商品開発事前チェック」「現地工場チェック」「品質安全検査」「商品検証」からなる独自の品質管理システムを構築。「原材料の管理から衛生管理まで各工程で商品開発事前審査により設計された基準をクリアしているか、開発段階で工場監査」(業務スーパーHPより)を行うなど、徹底した品質管理を実施していると公表している。

 そんな業務スーパーで商品回収が目立っている。今年4~9月の半年間で発生したものだけでも以下の19件に及んでいる。

(9月)
 ・混ぜるだけ ビビンバの素
  (一括表示に記載のない添加物が検出)
 ・ソフトワッフル ヘーゼルナッツチョコクリーム 
  (同上)
 ・グリーンアスパラ(ホール)
  (一部商品で基準値を超える残留農薬が検出)

(7月)
 ・低塩本醸造しょうゆ1L ※他社製品
  (保存料の添加量基準の超過)
 ・ブルダックトッポッキスナック
  ブルダックトッポッキスナック(上記と別商品)
  トッポッキスナック
  (一括表示に記載のない添加物が使用基準を超えて検出)

(6月)
 ・パラタ(プレーン)
  (一部商品に虫体混入)

(5月)
 ・つけ麺スープ 濃厚魚介しょうゆ味 
  (殺菌不良の商品混入の可能性)
 ・ごぼうにんじんミックス
  (一部商品に硬質異物混入)
 ・冷凍いちご
  (一部商品で基準値を超える残留農薬が検出)
 ・サジージュース
  (一部商品で発泡が確認)
 ・燻豆腐干(燻り豆腐)
  (一括表示に記載のない着色料が検出)

(4月)
 ・冷凍団子6種類 ※他社製品
  (賞味期限切れ食品添加物の使用)

 小売りチェーン関係者はいう。

「商品回収が多いということは、それだけ発売後の商品の品質チェックを入念に行って、問題が見つかれば隠さずに正直に公表して対応しているという証しでもあり、一概に『多いから悪い』ともいえない。ただ、ここまで回数が多いと、消費者としては『業務スーパーの食品は本当に買っても大丈夫なのか』と安全性に懸念を持っても仕方ない」

「安さ」だけでは消費者の信頼・支持を得続けることは困難

 なぜ業務スーパーでは商品回収が多く発生しているのか。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「他の大手流通チェーンに比べて、商品回収の頻度が多いように思います。業務スーパーのオリジナル商品はアジアやヨーロッパをはじめとする海外の工場・メーカーからの直輸入が多く、なかなか監視の目が行き届きにくいという面はあるでしょう。発売前にどこまで現物を検査しているのかはわかりませんが、すべての商品の中身を検査することは不可能なので、検査が不完全になっている可能性もあるでしょう。

 業務スーパーは安さを売りにする小売チェーンですが、食品の取り扱いにおいて品質の安全性確保は最優先すべきであり、多少のコストがかかっても取り組むべき事柄です。今の消費者は『安さ+安心・安全』を求めており、『安さ』だけでは消費者の信頼・支持を得続けることはできません」

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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