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テレビ局はなぜ「異業種」に走るのか…フジ・SBI提携が映す地上波モデルの終焉

2026.07.02 05:55 2026.07.01 18:51 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=川﨑一幸/金融アナリスト
テレビ局はなぜ「異業種」に走るのか…フジ・SBI提携が映す地上波モデルの終焉の画像1
本社が所在するFCGビル(フジテレビ本社ビル/「Wikipedia」より)

●この記事のポイント
フジ・メディア・ホールディングスとSBIホールディングスが資本業務提携協議を発表。SBIはすでにフジ株7%を握る大株主で、1000億円規模のIPファンド参画も検討。日テレ×ジブリ、テレ朝×KDDI、TBSの不動産事業と比較しながら、87億円の営業赤字・アクティビスト対策・地方局再編という3つの視点から、フジが「金融」を選んだ理由を分析する。

 フジ・メディア・ホールディングス(FMH)とSBIホールディングスは6月26日、メディア・コンテンツ領域における戦略的資本業務提携に向けた協議・検討を開始したと発表した。多くの報道は、ドラマやアニメの共同制作、知的財産の海外展開といった「協業内容」に焦点を当てている。

 しかし、この提携を単体で見ていては本質を見誤る。日本テレビはスタジオジブリを、テレビ朝日はKDDIを、TBSは不動産を、それぞれ生き残りの拠り所としてきた。地上波の広告モデルが構造的に縮小するなか、キー局各社は今、自局の枠を超えた「異業種連合」に活路を求めている。フジが選んだ相手が「金融」だったことの意味を、他局の選択と比較しながら読み解きたい。

●目次

各局が選んだ「駆け込み寺」——3つの生存戦略

(1)日本テレビ×スタジオジブリ コンテンツで勝負する王道路線
 2023年9月、日本テレビ放送網はスタジオジブリの株式を取得し、議決権ベースで42.3%を持つ筆頭株主として子会社化した。きっかけは宮﨑駿監督(当時82歳)と鈴木敏夫プロデューサー(同75歳)の高齢化に伴う後継者問題で、純粋な事業戦略というより長年の信頼関係が土台にある。とはいえ結果として日テレは、世界的評価の高いIPを自社グループに取り込むことに成功した。強みは圧倒的なコンテンツ力だが、稼ぐ手段は依然として広告・配信という既存モデルの延長線上にあり、制作費の高騰やヒットの波に業績が左右されやすいという弱点は残る。

(2)テレビ朝日×KDDI 通信インフラと組む配信直結型
 テレビ朝日とKDDIは2019年末に動画配信会社TELASAを50%ずつの出資で設立し、2020年春からサービスを開始した。5G時代の動画配信を通信キャリアと二人三脚で先導する狙いだが、KDDI自身がNTTドコモやソフトバンクとの通信・配信競争にさらされる立場にあり、キャリア側の経営判断にテレビ局側が影響を受けるリスクは常につきまとう。

(3)TBSホールディングス 不動産で稼ぐ延命型
 TBSは三菱地所と共同で、本社のある赤坂駅前一帯を再開発する「赤坂二・六丁目地区開発計画」を進めている。地上40階・高さ約206mのオフィス棟と、地上18階・高さ約100mの劇場・ホテル棟からなり、2028年の完成を予定する。放送収入が伸び悩むなか、不動産事業はTBSの利益を支える大きな柱になっており、ある年度の決算ではメディア・コンテンツ事業と不動産事業の合計が連結営業利益の85%を占めた。経営の安定度は高いが、メディア事業としての成長性という点では限定的だ。

フジはなぜ「金融」を選んだのか

 対してフジが選んだ相手はSBIホールディングスという総合金融グループだった。SBIグループは既にフジ株の約7%をグループ全体で保有する大株主であり、その関係は2005年、ニッポン放送株買収騒動の際に北尾吉孝会長兼社長が「ホワイトナイト」としてフジ側を支援した経緯にまで遡る。今回の提携では、ドラマやアニメの共同制作、知的財産のグローバル配信に加え、SBIが組成を進める1000億円規模のメディア・IP投資ファンドへのフジの参画も検討されている。

なぜ「所有」ではなく「金融スキーム」なのか

 SBI側が公表した資料を読むと、その狙いは単なる「金融によるコンテンツ支援」にとどまらないことがわかる。SBIネオメディアホールディングスは、IPの創出から製作・発信・拡散・収益化・ファンコミュニティ形成までを一気通貫で支援し、それを金融サービスや投資機能、Web3基盤と接続することで「感情経済圏」と呼ぶ新たな経済圏の形成を目指すとしている。日テレのようにIPそのものを自社で抱え込むのではなく、金融の仕組みを介してファンや投資家の資金を呼び込み、そこから収益を還流させる——コンテンツの「所有者」ではなく「プラットフォーマー」としての立ち位置を志向している点が、他局との決定的な違いだ。

「テレビ局が自前でIPを抱え込むには巨額の制作費と時間がかかる。フジの選択は、コンテンツを直接保有するより、金融の仕組みで外部資金を呼び込み、そこから収益を得る”胴元”型のポジションを取りにいったとも解釈できる」(メディア業界に詳しい証券アナリスト)

アクティビスト対策としての「安定株主」

 もう一点見逃せないのが、フジの厳しい経営環境そのものだ。FMHは2026年3月期に87億円の営業赤字を計上し、認定放送持株会社に移行した2008年以降で初の赤字に転落した。一方で、村上世彰氏が関わる投資会社レノや米ダルトン・インベストメンツといったアクティビストは、不動産子会社サンケイビルのスピンオフ(分離)を繰り返し要求しており、フジのPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回る水準で推移してきた。こうした状況下で、経営への重要提案を行わない立場を保ちながら関係を深めるSBIとの提携強化は、外部資本による経営関与圧力に対する一定の緩衝材として機能しうる。資産(お台場の土地や保有株式)に対して株価が割安なフジHDにとって、百戦錬磨の金融グループを安定株主に迎えることは、他のアクティビストに対する牽制にもなり得る。

「地銀連合」の次は「地方系列局」か

 さらに注目すべきは、SBIが地方銀行との連携で培ってきたノウハウだ。SBIは2019年以降「第4のメガバンク構想」を掲げ、島根銀行や福島銀行など全国9行の地方銀行と資本業務提携を結び、「リージョナルからネーションワイドへ」を合言葉に、地方金融機関のデジタル化と広域ネットワーク化を支援してきた。資本関係を持たずとも中核となって地域金融機関を束ねる「分散型の連合体」というのがSBI流のやり方だ。

 フジ系列(FNN/FNS)は全国に系列局を持つネットワークであり、人口減少と広告市場の縮小に伴って経営基盤が細る地方局は少なくない。SBIが地銀連携で磨いてきた「緩やかな連合による再生モデル」が、系列局ネットワークに応用される可能性があるかどうか——現時点で両社はそこまで踏み込んで明言していないが、SBIのこれまでの事業展開パターンを踏まえれば、今後注視すべき論点だろう。

「SBIの地銀連携は、出資先を丸ごと子会社化するのではなく、システムやノウハウを共有しながら緩やかに束ねる”分散型連合”が特徴。同じ発想がテレビの地方局ネットワークに持ち込まれるなら、系列局の経営効率化と引き換えに、SBIの金融インフラが地域メディアの隅々まで浸透していく可能性があります」(金融アナリストの川﨑一幸氏)

 日本テレビとテレビ朝日は、それぞれコンテンツと通信インフラという「メディアの延長線上」で勝負する。TBSは不動産という「本業以外の確実な収益源」で経営を安定させる。そしてフジは、メディアという事業の枠組みそのものを、金融プラットフォームに接続し直そうとしている。

 最もプライドを賭けた選択をしたのはフジかもしれない。金融のプロフェッショナルであるSBIとの関係を深めることは、コンテンツ制作やメディア経営のノウハウを外部に委ねるリスクと表裏一体であり、一歩間違えれば「メディアの主導権」を金融資本に譲り渡す結果にもなりかねない。しかし、地上波モデルの縮小スピードを考えれば、既存の枠組みにとらわれない選択こそが、結果的に生き残りの近道になる可能性もある。各局の異業種連合が今後どのような果実を結ぶか、事業の進捗を注視したい。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=川﨑一幸/金融アナリスト)

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公開:2026.07.02 05:55