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フジテレビで早くもCM再開の動き…10月期に本格回復で意外に早く黒字転換か

2025.02.09 2025.02.09 13:24 企業
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フジテレビ公式サイトより

 中居正広さんと被害女性のトラブルをめぐりフジテレビジョンの会長・社長が辞任にいたった問題。一連の同社の対応を受けて数多くのスポンサー企業がCM放送を中止するなか、ガス給湯器事業などを手掛ける株式会社キンライサーは7日、CM放送を再開したことを発表。通信販売業の夢グループ、ベリーベスト法律事務所などCM放送を継続している企業もあるなか、キンライサーに続いてCM放送を再開する動きは広まっていくのか。

 スポンサー離れが起こるきっかけとなったのが、フジテレビの港浩一社長(すでに辞任)ら経営陣が1月17日に開いた会見だった。幹部社員が女子アナウンサーを接待や懇親会の席などに同席させていた疑いも浮上しているなか、出席するメディアを記者クラブに加盟する社に限定し、会見の模様の映像の撮影を禁止。さらに、立ち上げる調査委員会を日弁連の定義に基づく第三者委員会の形態にはしないと説明したことを受けて批判が拡大。

 会見翌日18日にはトヨタ自動車や日本生命保険など大手企業がフジテレビ番組でのCM放送の見合わせを発表し、この動きに追随する企業が続出。フジテレビは放送見合わせ分の広告料金について返還し、さらに2月以降の放送広告契約のキャンセルにも応じると発表。現在、フジテレビ番組内で放送されるCMの大半がACジャパンの公共広告で占められるという異例の事態となっている。

 フジテレビの経営への影響は甚大だ。持ち株会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)は1月30日、フジテレビの2025年3月期の広告収入が従来計画を233億円下回ることで、フジ・メディアHDの連結純利益が前期比192億円減(74%減)の98億円になる見通しだと発表した。

「今年度通期でフジテレビ単体では最終損益が赤字になるが、同社は近年は視聴率低迷が指摘されていたものの、黒字をキープしていた。放送広告料金が下がってきているとはいえ、ゴールデンタイムの番組のタイム(特定の番組内で放送する枠)の場合、1カ月で数千万円というのが相場で、非常に利幅が大きい商売といえる」(テレビ局関係者)

 このほかにも、フジテレビの業績を押し下げる要因が出ている。約120社のテレビ番組制作会社が加盟する全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は1月30日、フジテレビに対して番組休止や変更に伴う補償を求める要望書を提出。フジテレビの清水社長は「最大限の配慮はできるように、ということでやっている」としている。

CM再開・継続の企業

 そうしたなかで早くもCM放送を再開する企業が出た。キンライサーは7日、公式X(旧Twitter)で再開を発表し、その理由を次のように説明している。

「今回、フジテレビの関係者の皆様と直接お話をさせていただきました。報道の訂正がなされた一方で、いまだ議論の余地が残る点もあることを理解しております。また、第三者委員会の調査が進む中で、新たな事実が明らかになる可能性もあると認識しています」

「私たちはフジテレビ様の中で誠実にこの問題に向き合い、より良い未来を築こうと努力されている方々がいることを知りました。どのような困難の中にあっても、変わろうとする意思がある限り、そこには前に進む力が生まれます。今回のCM再開が、未来を信じて努力を続ける方々への励ましの一つとなることを願っております」

 多くの企業がスポンサーから撤退するなか、CM放送を継続している企業もある。その一社、ベリーベスト法律事務所はその理由について、リリースで次のように説明している。

<当事務所のテレビコマーシャルは、主としてB型肝炎給付金請求・アスベスト健康被害給付金賠償金請求という国の制度の告知を兼ねております。集団予防接種等の際に注射器が連続使用されたことが原因でB型肝炎ウィルスに持続感染した方々の被害救済のための広告、あるいは、建設現場や工場においてアスベストを吸入したことにより健康被害が生じた方々の被害救済のための広告であって、極めて公共性が高いものです。とりわけ、B型肝炎給付金請求・アスベスト健康被害給付金賠償金請求の制度は、医師ですら知らないこともあり、被害に苦しむ多くの方々が制度を知らず、補償を受けられないままでいます。したがって、被害者の方々への告知を行き届かせて、被害の救済を広く進めるためにも、安易にAC広告に差し替えるべきではないと考えております。また、AC広告に差し替えたとしても、既にフジテレビに支払われた広告料は返還されませんので、広告を放送し続けることがフジテレビの支持につながるわけではありません>

 また、夢グループの石田重廣社長は2月1日付「女性自身」ウェブ版記事内で次のようにコメントしている。

「社長だけの会社じゃないんですから。従業員がいての社長ですから。従業員がみんなでこれから頑張んなきゃいけない、そして会社を守りたいと言っている時に、僕はやっぱり少しでも応援してあげたい」

26年度には単体で黒字化か

 CM再開の動きは広まっていくのか。

「結論からいえば、すぐに広まっていくとは考えにくく、3月に予定されている第三者委員会による調査結果の発表が終わるまではスポンサー企業も動けない。その後に再開の動きが徐々に広まるかどうかのカギをにぎるのは、やはりその調査結果の内容だ。内容を踏まえて、フジが中居さんの問題の関係者と幹部に対してきちんとした処分を下せるのか、この問題に限らず長年にわたり会社全体に根付いた慣習などを検証し、再発防止策や経営改革策を打ち出すことができるのかが問われることになる。そこでフジが曖昧な処分や対応で済ませれば、スポンサーからの信用を回復できずにCMが入らない状況が続くことになる」(テレビ局関係者)

 別のテレビ局関係者はいう。

「例年4~6月期の放送広告の商談・契約は1~2月に行われるが、たとえ3月の第三者委員会の調査結果報告とそれに対するフジの対応が一定の評価をされるものであっても、金額をはじめとする契約条件の協議に時間がかかるため、すぐに4月期からCM出稿が回復するという流れにはならない。当然ながらスポンサー企業は値引きを要請するので、それにフジがどこまで応じるのかという問題もある。スポンサー企業としても数カ月や半年程度はフジに本気で改革を実行する気はあるのかについて、様子見をする必要があるし、他社の動向も見ながら判断する必要があるためです。ですが、10月期からはかなりCM出稿が回復してくる可能性が高く、来年度もフジテレビ単体では赤字になる可能性はあるものの、26年度には期初からCMが入って黒字転換して意外に立ち直りは早いのではないかともいわれている」

 当サイトは1月27日付記事『スポンサー企業がフジテレビCM中止→数千万円の広告の効果なかったと気づく?』でテレビCMの効果について検証していたが、以下に再掲載する。

※以下、肩書・時間・数字・固有名詞等の表記は掲載当時のまま

――以下、再掲載(一部抜粋)――

 企業が高額な費用をかけてCMを放送して、それに見合う効果を得ているのかという点が一部で話題となっている。テレビCMには特定の番組内で放送する「タイム」と、番組は指定せず放送時間を指定する「スポット」があり。在京キー局の場合、タイムは1カ月で数十万~数千万円、スポットは1回当たり数十万~100万円ほどとされる。その費用対効果について、在京キー局の1社であるテレビ朝日は公式サイト上で次のように説明している。

<テレビCMの視聴率を合計した指標のGRPは、【個人全体視聴率×CMの本数】の計算式で算出することが可能です。仮に、視聴率が5%の番組に3本CMを放送した場合は、5%×3本=15GRPとなります。GRPはテレビCMの露出量ともいえます。この値が高ければ高いほど、より多くの視聴者の目に触れていると考えられるでしょう。すなわち、GRPが高い数値だった場合、出稿したテレビCM の費用対効果も高いと言えるでしょう>

<そもそも、テレビCMには商品やサービスへの興味・関心を抱かせるという役割があります。テレビCMなどのオフライン広告では、直接購入につなげる方法はありませんので、間接的な効果を考えるようにしましょう。たとえば、特定のテレビCMに何度も接触しているうちに、しだいに興味を抱くようになり、結果的に気になって購入するというケースもあります。テレビCMを視聴してダイレクトに商品の購入に至ったかまでは計測できませんが、間接的に視聴者の行動に影響を与えることはできます>

BtoB企業も求人のためにCM放送

 経営コンサルタントで未来調達研究所取締役の坂口孝則氏はいう。

「インターネット広告以外の広告は明確な効果というのは算出できませんが、結論からいうと、効果がないサービスは自然淘汰されますし、企業も効果がないものに高額な費用を支払いません。ネット広告がまだ普及していなかった以前と比べて、テレビCMの効果が低下して、料金も下がっているかもしれませんが、スポンサー企業が『この金額であればギリギリ費用対効果が見込める』という水準にまで料金が落ちているのではないでしょうか。ベンチャー企業が地方局のCM枠を買ったりもしていますが、体力がない企業が安くない金額を払ってまで効果のないことはしないでしょう。

 直接的に商品やサービスの販売増加に結びつかないかもしれませんが、ある企業の方は冗談半分で『社員の親御さんを安心させるためにCMを流している』と言っていました。未曾有の人手不足の今、BtoB企業も求人のために企業イメージをマスに訴える目的でやっているという面があります。宣伝効果とは少し違うのですが、日本人は1人当たり3時間ほどテレビをつけっぱなしにしているというデータもあり、能動的に情報を発信するメディアとして視聴者からは高い信用を得ますし、企業はテレビCMを放送すると視聴者に強いブランドイメージを印象づけることができるので、いまだにテレビは“信頼できる広告媒体”とみなされているのでしょう」

 では、テレビCMは今後も残っていくのか。

「先ほど明確な効果は算出できないといいましたが、例えばある企業はCMの画面上に記載するお問い合わせ電話番号を放送時間ごとに変えて、どの時間帯に流せば効果が高いかを測定していました。ただ、基本的にはスポンサー企業は定量的な効果を把握しておらず、テレビCMがそのような性質である限り、市場規模は徐々に縮小していくのかもしれませんが、かといって広告価値が完全に否定されるものでもないでしょう」

(文=Business Journal編集部)

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