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 「人がAIの世話をしている」という”ねじれ”を解消せよ…DMMグループ発のCS特化AI「SureSide」が挑む、PoC死の構造的課題

2026.06.17 12:00 2026.06.16 15:46 企業
文=昼間たかし

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●この記事のポイント
・生成AIのPoC(概念実証)が失敗に終わる最大の原因はモデルの性能ではなく「モデルの外側」にある。Algoage CEOの横山勇輝氏は、コンテキストとナレッジの整備こそが成否を分けると語る。
・DMMグループのカスタマーサポート部門に2年以上、当事者として深く関わり、現場の”痛み”を体感したからこそ生まれたCS特化AIサービス「SureSide」。平均対応時間の約3割削減という実績を引っ提げ、2026年5月にリリース。
・「いきなり自動化するな」がSureSideの思想的核心だ。まずAIでオペレーターを支援しながら現場でナレッジを育て、精度が確認できた業務から段階的に自動化へ移行する”現場育ち”のアプローチで、PoC止まりを突破しようとしている。

 生成AIへの期待は高まる一方で、現実はPoC(概念実証)の段階で止まり続けている。MITの調査によれば、エンタープライズ向け生成AIのPoCのうち、実際に投資対効果を出せているのはわずか20社に1社。95%が”失敗”に終わるという。

 なぜ、これほど素晴らしい技術が現場で機能しないのか。

 その問いに正面から向き合い、DMMグループのカスタマーサポート現場で2年以上にわたって試行錯誤を重ねてきたのが、株式会社Algoage(アルゴエイジ)だ。東京大学AI研究室出身のメンバーが2018年に創業し、2020年にDMMグループに参画した同社は、5月21日、CS領域に特化したAIサービス「SureSide(シュアサイド)」の正式提供を開始した。

 六本木のDMM本社で開かれた発表会で、代表取締役CEOの横山勇輝氏はこう語った。

「自分でも生成AIを使っていて、明らかに世の中を変える技術だという感覚はあります。だとすれば、この直感と現実のギャップ、いわゆる”PoC死”が後を絶たないこの違和感の正体は何なのでしょうか」

●目次

・AIの成否は「モデルの外側」で決まる

・社長自ら金沢のコンタクトセンターに”篭った”理由

・「人がAIの世話をしている」という”ねじれ”

・「いきなり自動化するな」──SureSideが描く段階的進化

・数億では終わらない、2桁3桁の事業へ

AIの成否は「モデルの外側」で決まる

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 発表会の席上、まず横山氏はPoC失敗の根本原因は、AIモデルそのものではないことを指摘した。

「AIからの恩恵が、一部の人にしか届いていないということです。AI好奇心が強く、学習に時間を投下できるアーリーアダプター層はどんどん使いこなしていきます。一方で、大多数のマジョリティは使う手前で詰まってしまい、だんだん使わなくなっていく。AIという技術は、社会全体を良くするものに見えながら、実態としてはむしろ格差を広げてしまっているんです」

 問題はAIモデルの性能ではなく、その”外側”にある。プロンプトの設計、コンテキストの整備、そして実行制御の仕組み(ハーネス)。これらはOpenAIやGoogleが磨いてくれるわけではなく、使う側が整備しなければならない。しかし、ここを自社任せ・個人任せにしていることが、PoC死やAI格差の根本的な原因になっているというのが横山氏の主張だ。

「『AIを使おう』と啓蒙するアプローチは正直うまくいっていません。現場に入って話すと、変化をそもそも望まない人が想像以上に多いんです。大事なのは、AIを使っているということを意識せずに勝手に使っている、そんな状態を作ることだと思っています。それが実現して初めて、マジョリティがAIの恩恵を受けられるのです」

社長自ら金沢のコンタクトセンターに”篭った”理由

 Algoageがこの結論に至ったのは横山氏自身の体験がある。

 生成AIが台頭したタイミングで、DMMのカスタマーサポート部から相談が来た。最初は生成AI型チャットボットのPoCから関わり始めたが、横山氏はまず自ら金沢のコンタクトセンターに足を運び、新人研修を受けた。

「やってみると、とにかく複雑で難しいんです。カスタマーサポートというと、AIで簡単に自動化できそうというイメージを持たれがちですが、自分でやってみるとそう簡単にはいかない。オペレーターの方々が普段どれだけ複雑な業務をこなしているか、身をもって痛感しました」

 だとしたら、どうすればAIが今の状況を楽にできるのか。人が人のやるべきことに集中できる状態を作れるのか。その思いでのめり込んでいった2年間だったと横山氏は語る。

 そんな市場は魅力も大きい。国内のコンタクトセンター領域のBPO(業務委託)だけで1兆円の規模があり、内製の人件費を含めると年間1〜2兆円が人件費としてかかっているとされる(業界推計)。

「5年後、10年後にどこまでAI化されるかはわかりませんが、10〜20%がAI化されるだけでも、数千億規模の市場が確実に数年以内に立ち上がります。非常に大きな市場だと思っています」

「人がAIの世話をしている」という”ねじれ”

 こうした経験を踏まえ、横山氏はCS領域でPoCが失敗し続ける構造的な理由を赤裸々に語った。

 例えば、AIエージェントを動かすには、極めて精緻なプロンプト設定が必要になる。「注文キャンセル」という一つの業務だけでも、システム関数の呼び出し方、本人確認の手順、日付形式の指定まで、人間がなかなか書けないような文章を延々と書かなければならない。しかもカスタマーサポートの現場には、こういった業務が数十から数百と存在する。

「苦労して設定を書ききっても、今度は本番で正しく動くかどうかが『博打』になってしまいます。日々業務ルールは変わるので誰も管理しきれなくなり、苦労して書いたプロンプトの大半が半年・1年で陳腐化していくんです」

 世界の最前線でも同じ失敗が起きている。フィンテック企業のKlarnaは2024年に「AIが700人分のCS業務を代替した」と発表したが、わずか1年でCEOが「AIではCSの品質が下がった」と認め、人間スタッフの再雇用に転換した。本番運用されているAIエージェントの68%が10ステップ以内に人間の介入を前提としており、顧客が「スムーズに人へ引き継げた」と感じた割合はわずか15%という調査結果もある。

 横山氏はこの現象の本質をこう言い切った。

「技術が変わっても、人がAIの設定に追われる構造は一切変わっていません。本来『AIが人の業務を助ける』はずが、『人がAIの世話をしている』というねじれが生じています。この構造自体を解消しなければならないと思っています」

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「いきなり自動化するな」──SureSideが描く段階的進化

 この問題への回答として生まれたのが「SureSide」だ。

 最大の特徴は「まず現場でAIを育ててから自動化する」という思想にある。これまでのアプローチでは、オペレーター支援用・チャット自動応答用・ボイス自動応答用と、それぞれのAIに対して個別にナレッジを作り直す必要があった。AI導入で楽になるどころか、二重・三重の管理が発生して逆に業務負荷が増えていたのだ。

 SureSideでは、現場のマニュアルや業務知識を一つの共通ナレッジ基盤「SureSideナレッジハブ」に集約し、すべてのAIが同じ情報を参照して動く仕組みを作った。人間用のマニュアルに書いてある論理構造を自動変換してAI用に最適化するため、設定の手間を大幅に削減できる。

「まずオペレーター支援AIとして現場に入り、AIが業務を学びながらナレッジを育てていきます。精度が確認できた業務から順次、チャットや電話の自動応答へと移行していく。いきなり自動化して失敗するのではなく、現場での支援実績自体が自動化のPoCになる設計にしています」

 どれくらいの成果が期待できるのか?

 DMMのカスタマーサポート部での実証では、平均対応時間が約3割削減された。また、導入前はベテランオペレーターと一般オペレーターの対応時間に1.7倍の差があったが、導入後期にはその差が1.1倍まで縮まった。

「AIの力でスキル差を埋めていけることを、数字として示せました。これが現場で育てるアプローチの成果だと思っています」

 気になる料金体系は、オペレーター支援については席数規模に応じた課金。自動応答については実際に削減できた問い合わせ数に対する成果報酬型を想定している。

数億では終わらない、2桁3桁の事業へ

 横山氏はSureSideの事業規模について、こう語っている。

「数億円規模のビジネスで終わるつもりはまったくありません。2桁、3桁の規模を目指していきます」

 そう言い切れるのはDMMグループという独自の環境があるからだ。高利益・非上場・オーナー直下という条件が揃っているからこそ、本当に価値があると思えば短期的な収益を度外視して大きく投資できる。

「スタートアップとしての独立性と大企業のリソース、その両方を持てる環境は日本でも稀有だと思っています。本当に意味のある事業であれば大きくかけて投資していけますし、事業を伸ばすことにとにかく集中できる。それがここで働いていて楽しいと感じるところです」

 そしてCSはあくまでも第一歩だと横山氏は言う。

「カスタマーサポートの現場でナレッジ管理とAI活用の汎用モデルを確立できれば、それはあらゆる業務領域に応用できます。人とAIが最適に協働できる環境をどう作るか、その問いはCS領域に限らず社会全体に関わるテーマです。この基盤を起点に、事業創造会社としてさらに広げていきたいと思っています」

 DMMという大規模CS現場で2年以上かけて体感した”痛み”と”失敗”を、そのままプロダクトに詰め込んだ。その強みが市場でどう評価されるか、これからが本番だ。

(取材・文=昼間たかし)

※本稿はPR記事です。

昼間たかし

昼間たかし/ルポライター、著作家

 1975年岡山県生まれ。ルポライター、著作家。岡山県立金川高等学校・立正大学文学部史学科卒業。東京大学大学院情報学環教育部修了。知られざる文化や市井の人々の姿を描くため各地を旅しながら取材を続けている。

X:@quadrumviro

公開:2026.06.17 12:00