竹中応札の意味
竹中はスーパーゼネコン5社のうち、唯一の非上場企業だ。工事高のほとんどを民間の建築工事が占める。オーナーの竹中統一会長は歴史に残るようなランドマークタワーの建築にこだわる。竹中はこれまでも、安値受注をものともせず最先端の技術力で良いものを建てる。建築の本体は赤字でも、利益率の高いオフィスのメンテナンスで長期間かけて利益を回収する。非上場企業だからできる芸当だ。
5大ドーム球場(札幌・東京・ナゴヤ・大阪・福岡)を始め、主要なランドマークは逃さず手掛けてきた。スーパーゼネコンにとってランドマークとなる大型施設は技術力をアピールする格好の場だ。高い技術を見せる「ショー・ウィンドー」なるため、各社は受注に凌ぎを削る。
ショー・ウィンドーの典型例といえば、大林組が手がけた東京スカイツリーだ。業界最大手の鹿島との一騎打ちを制し落札した。竹中は高さ300メートルで日本一の超高層ビル「あべのハルカス」(大阪)を建設した。大林組が受注の最有力候補であるといわれたが、竹中に敗れた。
竹中は新国立競技場の建設では、難工事といわれた屋根部分を受注し、技術力を誇示する予定だった。しかし、建設計画は見直しとなった。屋根工事はあまり人手はいらないので、下請けの人員の手配をそれほどしていなかったため、清水と大林に協力を仰がざるを得なかった。工区を区切る土木工事ならJVで支障はないが、建築工事は単体受注するほうがうまくいく。
「竹中がJVで応札した時点で、勝負はついていた。あくまで競争入札という建前を守るため、竹中・清水・大林がJVを組んだ」(ゼネコン首脳)
応募者は11月16日までに計画を提案し、JSCに設置された専門家グループによる審査を経て、12月末に事業者が決まる。完成は20年1月の見通しである。
(文=編集部)