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月の土地所有者、すでに100万人突破…2700円から購入可能

文=OFFICE‐SANGA
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「Getty Images」より

 人類が地球を飛び出し初めて地球以外の星にたどり着いたのが、1969年のアポロ計画である。当時は米国と旧ソ連(現ロシア)が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げ、緊張高まる国際社会で一歩リードしようと躍起になっていたのだ。結局、米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士2名が人類史上初めて月面に着陸したことで、競争は次第に終息した。

 以降、宇宙開発技術は目覚ましい発展を遂げるが、月の土を踏んだ者はひとりもいない。しかし、月の土地を所有する人は世界中に100万人以上もいるというのだ。一体どういうことなのか。

 地球外不動産として月の土地を販売しているのは、米LUNAR EMBASSY(ルナ・エンバシー)社だ。価格は税込み2700円からで、注文すれば日本代理店を通して権利書が1週間ほどで手元に届くという。しかも30日の返金保証付きで、土地の維持管理費用も一切不要だ。ただし、20歳以下の未成年は保護者の同意が必要とのことだ。

 2700円ではまともな土地はなかなか買えないが、地球外不動産の売買に関する明確な国際協定が存在しない今だけのチャンスなのかもしれない。というのも、月などの天体を含めた宇宙に関する法律は1966年に採択された宇宙条約のみであり、同法は月の所有権に関して国家が主張することを禁じているものの、個人が所有することについて言及していないのである。ルナ・エンバシーのデニス・ホープCEO(最高経営責任者)はこの盲点を突き、1980年、サンフランシスコ当局に所有権の申し立てを行ったところ受理され、続けて米国政府と旧ソビエト連邦に権利宣言書を提出し、月の土地の販売を始めた。

 実際、購入者からは「結婚記念日の贈り物として購入した」「月を見るのが楽しみになった」「夢が膨らんだ」などの感想が届いているという。しかし同社は、土地の権利については、将来的に新たな国際協定が結ばれることも否定できないとする。1984年に制定された月協定では、営利を目的とした月およびその他天体の開発・利用を禁じており、個人についても権利を主張することはできないと定めているのだ。ところが、同協定の締約国は20カ国に満たず、その中に宇宙開発を行っている国はほとんどないため、影響力は少ないといわれている。

 では、法律の専門家の意見はどうか。飛田&パートナーズ法律事務所所属の馬場悠輔弁護士は月の土地の所有権について、次にように語る。

「私人による月の土地の販売に関しては、『月の土地の所有権を移転させる』という内容の不動産販売であれば、その契約は実現可能性のない契約として、無効ないし取り消し得る契約になるでしょう。しかし、販売会社のホームページを見ると『私どもは、月の土地を楽しんでいただけることを目的としており、日本の不動産と同じように考えていただくと無理のある商品と思われます』としているので、あらかじめジョーク商品であることを明示しています。ジョーク商品を楽しむという内容の契約とすれば、問題なく成立するでしょう」(馬場弁護士)

 宇宙開発については現在、米ベンチャーを中心に多くの民間企業が取り組んでおり、民間ロケットの打ち上げや宇宙ステーションの開発など、スペースビジネスが加速している。内閣府は、今後の宇宙開発はビッグデータや、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などが宇宙分野でも活用されるとし、2030年を目標に現在1.2兆円といわれる市場規模の倍増を表明した。

 現在、宇宙飛行士になれるのは数々の難関試験を突破したごく一部の人に限られるが、民間宇宙ロケットで気軽に月へ旅行する日も遠い未来の話ではない。そうなれば、地球外不動産の所有権に関する意識も身近になってくるのではないだろうか。月の所有権議論に参加するためにも、1回分の飲み会の誘いを断ってロマンを購入してみてもいいかもしれない。
(文=OFFICE‐SANGA)

OFFICE-SANGA/編集プロダクション

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