異常なほど手が込んだ偽装の手口
第三者検証委員会が提出した調査報告書によると、化血研の不正は74年ごろから行われていた。ごまかしがさらなるごまかしを呼ぶかたちで、国が査察を行う場合に備えて「本物」と「偽物」の製造記録を作成していたという、手の込みようだ。
国に見せる「偽物」は「ゴシック体」、社内向けの「本物」は「明朝体」にして、社員が区別できるようにしていた。また、製造記録の中で不正を記録した部分のページ数を「2.5」とし、査察が入る際はそのページを抜いて発覚を免れていたチームもあったという。
古い記録の提出を求められた際には、紙に紫外線を当てて変色させ、年代を古く見せかけるという芸の細かさも、あきれるばかりだ。さらに、検査が入る前には想定問答集を作成し、予行演習まで行う念の入れようである。
医師「薬害エイズ事件をまったく反省していない」
報告書によると、化血研は血液を固まりにくくするヘパリンを血液製剤に添加したり、殺菌効果を確実にするために加熱過程を加えたりするなど、国の承認を得ずに製造工程を変更していた。しかし、重篤な副作用の報告が確認されていないことなどから、報告書は「人体に対して危険を及ぼすことを示す証拠が見当たらない」と結論づけている。
厚労省審議会で、化血研はヘパリンを加えた理由を「製造過程での効率を上げるためだった」と説明し、組織ぐるみの行為であることを明らかにした。これを受けて、「微量とはいえ、血友病患者にとって、ヘパリンは使用してはいけない薬品だ。薬害エイズ事件をまったく反省していない」と憤慨する医師もいる。
12月14日、厚労省は製品の品質や安全性を確保するように求める行政指導を出し、近く、より厳しい行政処分も行う。さらに、法人としての責任を追及するために刑事告訴の検討も明言している。また、今後はほかの製薬会社に対しても、製造工程の査察を抜き打ちで行うなどの対策も検討している。
生命に直結する薬の製造において、ミスは許されない。ましてや、組織ぐるみの不正や隠蔽は言語道断だ。化血研には、今後さらに厳しい処分が求められるだろう。
(文=編集部)