缶詰みかんがどのようにつくられているか、ご存じだろうか。
「塩酸に浸けて内皮まで溶かしていると聞いたことがある。食べると危険らしい」といった情報が飛び回っている。筆者は、食品添加物は極力避けるべき、とのスタンスではあるが、この缶詰みかんについては危険を煽る情報に物申したい。
日本缶詰びん詰レトルト食品協会によると、缶詰みかんのつくり方は以下の通りだ。
「缶詰のみかんの皮は、剥皮(はくひ)装置により自動的にむいています。みかんの外果皮の剥皮は、皮がむけやすいようにスコルダー(湯煮機)を通し、そのあと、外果皮に切り口を付け、ローラー巻き込みにより剥皮します。
みかんの身割りは、水中でゴム製など弾性材のさくの間を通して、ばらばらに分割します。
みかんの内果皮は、酸・アルカリ処理によってむきます。すなわち希塩酸溶液(約0.5%)と希水酸化ナトリウム溶液(約0.3%)の微温液で、それぞれ20~40分程度処理したあと、水洗水さらしを50~60分行うことによって、内果皮がむけます。なお、処理に用いる酸・アルカリは食品衛生法において、食品添加物に指定されている純度の高いものであり、水洗により製品には全く移行、残存しないことも条件とされています」
つまり簡単にまとめると、湯通ししてローラーに巻き込んで外皮をむく。その後、薄い塩酸などに浸して内皮が剥けるという工程だ。
塩酸によって内皮を溶かしているというところは、出回っている情報に間違いはない。だが、塩酸は揮発性が高く、加熱すると完全に除去できるといわれている。
学生時代に、化学の実験などで使った“劇薬”というイメージが強く、「塩酸が残留しているかもしれないから、食べると危険」と考える人が多いのもわからないでもない。確かに塩酸も水酸化ナトリウムも毒性が強く、体内に取り込めば危険であるが、みかんの皮剥きに使用されているのは極めて低濃度の希釈液で、さらに移行・残存がまったくないとされている。
それを、「塩酸が使われているから、食べると危険」と騒ぎ立てるのは軽率すぎる。もちろん、自らの手でむくのが最も安全であるので、それに越したことはない。ただし、一般に流通しているみかんやオレンジなどには、ワックスや輸入物であれば防カビ剤などの農薬が塗布されている。外皮をむく際にそれらが手に付着し、その手で果実を食べるのは、缶詰みかんの塩酸よりもはるかに危険度が高いのではないだろうか。