内部告発がきっかけで40年以上の不正が発覚した、化学及血清療法研究所(以下、化血研)。11月25日に第三者検証委員会が提出した調査報告書では、化血研の不正の実態が厳しく断罪された。
明らかになったのは、内部告発を想定したマニュアル作成や、書類を紫外線に当てて古いものに見せかけるなど、患者不在の隠蔽工作だ。これに、塩崎恭久厚生労働大臣も「薬務行政への裏切り」と批判、刑事告訴の検討も指示した。
化血研は、1945年に熊本医科大学(現:熊本大学医学部)の研究室を母体に設立された。血友病患者などに使用する血液製剤やインフルエンザ用のワクチンなどを製造し、インフルエンザワクチンでは国内シェアの約3割を持つ。
一方、80年代後半に血友病患者らがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に汚染された輸入非加熱血液製剤を投与されてHIVに感染した、いわゆる「薬害エイズ事件」では、化血研は製造会社として血友病患者らから提訴されている。
その後、化血研は96年に「安全な医薬品を消費者に供給する義務があることを深く自覚し、悲惨な被害を再び発生させることがないよう最善・最大の努力を重ねる」と謝罪、患者らと和解が成立したという経緯がある。
きっかけは内部告発の投書「心が痛む」
5月28、29日、医薬品の認可などを担当する医薬品医療機器総合機構(PMDA)が化血研に立入検査を行い、国内献血由来の血液製剤の全製品で、認められていない製造方法でつくられていることが判明した。PMDAによる立入検査が行われたのは、化血研の社員とみられる匿名の内部告発があったからだ。厚生労働省に届いたその投書には、法令違反をしていることについて「心が痛む」と記載されていた。
立入検査の結果を受けて、厚労省はすぐに血漿製剤12製品26品目の出荷を差し止めた。例年であれば10月初旬から接種が始まるインフルエンザワクチンについても、10月21日まで出荷自粛が解除されず、医療現場に混乱を与えた。その後も、一連の不正報道を受けて、医療機関や患者からは化血研のワクチンを避ける動きが起きており、返品が相次いでいるという。