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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」

マック、経営破綻の可能性も…キャッシュ枯渇の懸念、託された「最後のチャンス」

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO

 昨年の同時期決算では売上総利益は194億円の黒字を計上して正常な状態でしたが、この1年で売り上げが347億円も減少したにもかかわらず、売上原価は126億円の減少に留まり、売上総利益が221億円も減少することにつながっていったのです。

 また、負債を見ると、借入が急増しているのが目立ちます。前年同期は長期借入が5億円と無借金経営といっても過言ではない水準でしたが、今期は短期と長期を併せて212億円の借入の残高があり、この1年で実に207億円も増加しているのです。

 一方、借入で巨額の資金を調達した割に、手元の現金は132億円と前年同期の286億円から154億円も減少しているのも気になります。第3四半期の決算短信にはキャッシュフロー計算書が添付されていないため推測になりますが、調達資金は巨額の赤字の穴埋めや店舗に対する設備投資などに消えていったのでしょう。

 さらに2年前まで遡ると452億円もの現金を保有していたことを考えれば、ここ数年で大幅なキャッシュの流出が続き、現状手元に残っているのは巨大企業にとっては心許ない水準といっても過言ではありません。今期の平均月商は115億円であることから、わずか1カ月ちょっとの売り上げ分ということになるのです。

 今後も赤字基調が続くなら、手元の現金と新たな借入で経営をやりくりしなければなりませんが、金融機関から借り入れられる額には限界があります。恐らく現状の売上規模や資産内容では、400億円から600億円程度が上限だと推測しますが、万が一来期も業績が上向かずに巨額の赤字を計上するようなことがあれば、借入でも賄えずにキャッシュが底をついて経営破綻することも、100%ないとは言い切れないのです。

 そのような危機的な状況に陥った際の最後の頼みの綱は、現在およそ半数の株を握るアメリカ本社であり、増資などで巨額の資金を日本マクドナルドHDに投入して最悪のシナリオを回避する必要があります。

 このような事態に陥らないためにも、アメリカ本社は現状の株価で1000億円にも達する株式を適切な機関に売却し、株価下落による損失を回避すると同時に経営再建を任せたほうがよいと判断しても、決して不思議なことではないというわけです。

最後のチャンス

 決算書を分析してわかるように、日本マクドナルドHDにとって経営再建にもう猶予はありません。一刻も早く生まれ変わって、顧客の信頼を取り戻し、再び利益の生み出せる体質へと変貌を遂げなければならないといえるでしょう。

安部徹也

安部徹也

株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。97年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業にとどまらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』には、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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