レトロゲーム機の復刻ブームに乗って、「PCエンジン」の復刻版である「PCエンジン mini」が今年3月に発売される予定だ。「ファミコン」や「メガドライブ」の復刻機からは一足遅れたが、果たして好評を得ることはできるのか。また、近年の復刻ブームの行く末はいかに。ゲーム事情に詳しいコラムニストのジャンクハンター吉田氏に聞いた。
メガドライブミニがヒットした理由
2020年3月に発売予定のPCエンジン mini。大ヒットした任天堂の「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」(以下、ミニファミコン)、「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」「プレイステーション クラシック」(以下、プレステクラシック)、「メガドライブミニ」などに続く人気ゲーム機の復刻版ということで注目されている。
昨今の復刻版のように、本体に数本のソフトが内蔵されていてテレビに接続するだけで遊べるゲーム機は「プラグ&プレイ」と呼ばれる。海外では昔からよくリリースされており、なかにはレトロなゲームをテーマにしたものも数多くあったという。
その流れで発売されたミニファミコンは、任天堂のような大手メーカーが自社でプラグ&プレイをリリースしたということで注目を集め、世界中で完売するほどの大ヒットを記録した。これ以降、レトロゲーム機を「ミニ化」するブームが巻き起こったのだ。
そんな復刻ブームの中で、ユーザーからの評判がいいのが昨年9月に発売されたメガドライブミニである。
「プレステクラシックがエミュレータ問題で評判が悪かったことなどから学び、中身も側(がわ)もしっかりとしたつくりになっています。当時のことをよく知っているスタッフを揃えて、セガファンの琴線に触れるような仕様に仕上げたことがヒットの要因だと思います」(吉田氏)
では、最後発となるPCエンジン miniは成功するのだろうか。
コナミのハード開発に懸念も
そもそも、PCエンジンはファミコンに対抗するべく、ハドソンと日本電気ホームエレクトロニクスにより共同開発され、1987年10月30日に発売された家庭用ゲーム機である。
「PCエンジン miniはハドソンを吸収合併したコナミグループが開発、販売します。この時点でゲームファンは興味津々なのです。コナミは多くの大ヒットソフトを生んでいますが、これまでハード機器を手がけたことはない。ノウハウ不足を懸念する声もあるくらいなので、開発に時間をかけており、そのため発売のタイミングが最後発になったのではないでしょうか」(同)
PCエンジン miniへの懸念は、ハード開発のノウハウ不足だけではない。なぜかアマゾンでの専売がアナウンスされており、その販売方法も消費者や小売業者から疑問視されているという。
「アマゾン専売を批判する人は多く、特に恩恵にあずかれない小売店は激怒しています。しかし、あるコナミ社員は『のちのち、確実に小売店に流す』と話しているので、そこまで気にすることではないでしょう」(同)
おもちゃ屋や量販店に流通させると、売れなかった場合に在庫がダブついて、値崩れを起こしてしまう。そうした事態を防ぐための施策なのだろう。しかし、肝心の予約状況が芳しくないという。
「コナミ社員いわく、予約が想定よりも少なく、現状では黒字にならないそうです。他社に差をつけるために58タイトルも内蔵する大サービスですが、いかんせん値段が先発品より高いため、予約が入っていないのだと思います」(同)
PCエンジン miniは復刻ブームの“最後の大物”
期待と批判の声が交じるPCエンジン miniだが、ヒットの可能性はあるのだろうか。
「メガドライブミニよりは売れないと思います。値段もそうですが、コントローラーの接続部がデフォルトで2つしかなく、マルチタップは別売りと、ユーザーに親切ではないように思えます。とりあえず眠らせているソフトコンテンツを使おうという趣旨なのでしょうが、マニアは各アーカイブコレクションなどですでに満足しているので、今さら飛びつかないのかもしれません。
また、セットで付属されている記念Tシャツもデザイン性に乏しく、評判が悪い。ここにも、コナミのハードビジネスの下手さが表れてしまっているのかもしれません」(同)
そうなると、PCエンジン miniは期待はずれに終わる可能性が高いということか。
「ただし、PCエンジン miniはレトロミニブームの最後の大物であることは間違いないので、コレクション的に買い揃える人はいるでしょう。これより後の世代の、当時は“次世代機”と呼ばれた『セガサターン』や『NINTENDO64』はシステム的にプラグ&プレイにするのは難しいと言われているため、ミニシリーズでの発売の可能性は低い。『MSXミニ』が発売されるという噂はありますが、まだわかりません」(同)
果たして、PCエンジン miniは復刻ブームの有終の美を飾ることができるのだろうか。
(文=沼澤典史/清談社)