小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長は経済同友会の副代表幹事なので、同友会の代表だ。安倍首相の財界人の応援団である「さくら会」は三菱グループの経営者が中心ということもあり、小林氏は三菱グループ代表という意味合いもある。
小林氏は74年に三菱化成工業(現・三菱ケミカルホールディングス)に入社。光ディスク子会社の立て直しで頭角を現し、07年から社長。ライバル企業という関係から住友化学会長の米倉経団連会長と犬猿の仲なのは知る人ぞ知る話だ。
安倍首相は諮問会議の民間議員の学識経験者枠に、小泉政権で構造改革を主導した竹中平蔵氏を据える考えだったといわれる。しかし、麻生太郎・財務相をはじめ安倍政権には小泉路線と対立した閣僚が多く、竹中氏とは水と油の関係。竹中氏の就任には麻生・財務相が反対し、甘利明・経済再生相も難色を示したとの情報もある。結局、竹中氏を産業競争力会議のメンバーに加えるという妥協案で落ち着いた。
産業競争力会議には東レ(繊維)、コマツ(建設機械)、みずほフィナンシャルグループ(金融)、ローソン(コンビニエンスストア)と、それぞれの業界を代表する企業経営者が選ばれた。
経済団体別の星取表(?)だと経済同友会が長谷川閑史・代表幹事と新浪剛史・副代表幹事の2人。これに対して経団連は坂根正弘・副会長1人。三木谷浩史・代表理事が選ばれた新経済連盟と同じ扱いだ。
いつもそうだが、重厚長大産業に偏重しているとの批判が出ることから、新しい分野を開拓した起業家が加わることが多い。今回は楽天の三木谷会長兼社長とサキコーポレーションの秋山咲恵社長がこれに該当する。
そこで「競争力会議の紅一点、秋山とはWHO?」である。実はサキコーポレーションは世界有数の産業用検査ロボットのメーカーなのだ。設立は1994年4月。本社の役員は、社長兼CEO(最高経営責任者)の秋山咲恵氏と、その夫である秋山吉宏・副社長兼CTO(最高技術責任者)の2人が常勤。非常勤取締役、監査役(公認会計士)の4人しかいない。
秋山咲恵氏は京都大学法学部に在学中、サークル活動の写真部で吉宏氏と出会う。吉宏氏はロボット工学を専攻する大学院生だった。吉宏氏は咲恵氏に一目惚れし、交際が始まった。
卒業後、咲恵氏はコンサルティング会社のアンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)に入社。一方、吉宏氏は松下電器産業(現・パナソニック)の無線研究所に入ったデジタル画像処理の技術者だ。94年、川崎市内のビルの一室に15平方メートルのオフィスを構えた。SAKI(現・サキコーポレーション)の誕生である。SAKIは、かながわサイエンススパーク(KSP)のスタートアップ企業の星である。
実装基板の両面を同時に検査する検査装置を、2004年に世界で初めて開発。しかし、性能面では劣るが価格が安い競合品が海外で作られるようになり、2008年12月期、2009年同期は大幅な減収、2期連続で億単位の赤字決算を余儀なくされた。打開策として島津製作所に第三者割当増資を実施。スマートフォンなどの生産ラインに組み込むX線検査装置を共同で開発することになった。X線技術を活用した実装検査装置が、サキコーポレーションの新たな生命線となる。