客層は圧倒的に若い女性の姿が目立つ。
もともと全国のローカル立地で、地方の主婦層を対象に伸びてきたしまむらは、ユニクロと違って、とかく地味なイメージがある。しかし近年は、後述するように都市部や都心立地にも積極的に出店し、女性専科の小型新業態なども投入、「しまラー」なる若い女性による「しまむらフリーク層」が話題になるなど、がぜん世間の注目度が高まっている。
●最後の沃野・都心に攻め上がる
ところで従来までのしまむらは、郊外やローカルの小商圏ロードサイド立地にこだわり、よほどのことがない限り、都市部やSC(ショッピングセンター)ビルイン出店に向かうことはなかった。
それが今では、しまむら業態の新店出店のほとんどが、東京、大阪、名古屋、福岡などの都市部に集中している。たとえば今期(2013年2月期)は、年間60~70店に抑えてきた新規出店を100店(うち、しまむら業態は55店舗)に拡大するが、そのうち8割が首都圏、近畿圏の都市部への出店となる。
もちろん都市部やビルイン出店は、従来のローカル立地への単独出店に比べ、かなりのコスト高となる。さらに店舗区画や店オペレーションにもさまざまな制約があり、得意の“しまむら仕様”(店舗規模とレイアウトの標準化、休日、営業時間設定、夜間納品体制等)を貫けないケースも多い。
にもかかわらず、こうした出店を進める最大の要因は、出店立地の枯渇にある。同社はしまむら業態【註2】だけで国内2,000店構想を描くが、現状1,237店舗(12年8月末時点)のしまむら既存店は、全国のローカル~郊外ロードサイド立地をほぼ埋め尽くした。
よって、さらなる多店舗化を目指せば、これまでしまむらにとって未開の処女地であり、最後の沃野でもある都市部や大商圏立地に打って出ざるを得ない。
同社の野中正人社長は、「(都市部の物件は)確かに家賃が高い。しかしその家賃比率アップ以上の売上増となれば、結果として、より多くの利益を得られる楽しみがある」と言う。そうであれば、しまむらの都市部出店は一石二鳥にも三鳥にもなるだろう。
実際、約200店舗まで増えた「都市部のしまむら」既存店は、いずれも好調裏に推移している。中でも、初の山手線内への出店となった高田馬場店(開業07年6月)や、三軒茶屋店(同09年12月)など500~600平方メートルの都心小型店は、いずれも高効率な繁盛店となっている。
また11年には、婦人に特化した小型新業態「しまむらレディース」(店舗面積は、しまむら標準店の半分以下である約500平方メートル)を名古屋中心部(栄ノバ店)、東京・お台場(アクアシティ店)、東京・下北沢の繁華街に相次ぎ出店するなどして業界の注目を集めた。
さらに12年7月には、初のファッションビル内への出店となる「しまむら津田沼パルコ店」(店舗面積約600平方メートル)を、9月には初の百貨店(大分のトキハ別府店)への出店も果たしている。今春には丸広百貨店(南浦和店)にも出店する予定だ。
●時ならぬ「しまむらブーム」の到来
それにしても、なぜ今、失礼ながら「田舎専科」だったしまむらが、都市部立地やSCでこうももてはやされるのだろうか?