コミュニケーション能力を高めるための条件
経営者がコミュニケーション、特に多数の社員や顧客、取引先を相手にした場合のコミュニケーション能力を高めるために必要な条件は4つある。
(1)情熱
これだけはなんとしても伝えたい、わかってもらいたい、納得してもらいたい、という強い思いである。
(2)内容(コンテンツ)
語るべき中身や内容がなければ空虚になる。
(3)話し方(デリバリー)
話が聴く人に対して与えるインパクトの93%は、話し方やジェスチャーで決まってしまうという。話の内容が持つ重みはわずか7%にしかすぎない。まさに「話が下手では話にならぬ」のである。
(4)人格(人間性)
コミュニケーションの最後の、そして最重要の決め手は話す人の人格である。聴く人は話す人の人柄や人間性を見て判断する。
多くの経営者にみられる、社員(人事部・企画部・広報部)が書いた原稿を感情を込めずにただ読むだけという“棒読み社長”は失格である。
そして、最後のAはACTION(改善)。それも迅速な改善である。「百聞は一見に如かず。百見は一考に如かず。百考は一行に如かず」という。見たり聞いたり学んだりすることはもちろん必要だが、最後は決断と改善が伴わなければ何も変わらない。ただ単なる評論家、批評家、学者の類で終わってしまう。学者と違って、経営者には厳しい結果責任が求められる。経営者は結果を出して初めて経営者といえるのだ。結果を出すためには迅速な行動力が必須である。
本文冒頭の「計画・実行・評価・改善」のPDCAを私は「並みのPDCAサイクル」と呼んでいる。それに対して「情熱・方向性・コミュニケーション・改善」のPDCAは一段レベル感の高い「プレミアムPDCA」である。本物の経営者は、「プレミアムPDCA」の人でなければならない。果たしてそういう経営者が日本人の中にいるだろうかといろいろ考えてみたが、残念ながらこの「四位一体」全部を見事に具現化している人は(少なくとも私の知っている限りでは)1人も思いつかない。
アメリカにはゼネラル・エレクトリック(GE)元CEO(最高経営責任者)のジャック・ウェルチのような人がいたが、日本人には見当たらない。青い鳥はどこにいるのだろうか?
(文=新将命/国際ビジネスブレイン代表取締役社長)