–「男らしさ」の呪縛について本を書かれたのは、どのようなきっかけだったのですか?
Tomy氏 普段の診療の中で、前々から男女の違いを感じていました。女性は、少しメンタルの調子を崩すと、自分から受診するけれど、男性は周囲に勧められて渋々といった様子です。すぐに入院したほうがいいほど症状の重い人もけっこういます。男性は基本的に強がりで、自分のストレスに対して少し鈍感なため、ついつい頑張りすぎてしまう人が多いのです。
–なぜ、男性は頑張りすぎてしまうのでしょうか?
Tomy氏 男性の行動は、どちらかというと“他律的”ですよね。自律的が自分優先なら、他律的は他者に決められるということ。子どもの頃から「男の子だから、ぬいぐるみじゃなくボールでしょ」と育てられて、大人になれば会社からビジネスマンとしての振る舞いを求められ、家庭では一家の主でなければならない。それが「男らしさ」の呪縛となって、パートナーにも愚痴を吐かず、弱みを見せられず、うつ状態に陥ってしまう男性は大勢います。一方で、女性は時代の変化で、さまざまな選択肢を手に入れてきました。
–女性はキャリアを積むもよし、主婦になるもよし、とも言えますね。
Tomy氏 そうです。しかし、社会が求める男性像は、意外と普遍的だと思いませんか? 草食男子やイクメンは話題になりましたが、現実には男性が育児休暇を取れる職場はほとんどありませんよね。今でもビジネスの現場では、頑張りすぎるくらいの男性のほうが評価されやすいのが現実です。弱音なんか吐いたら自分の評価が下がるのではないかと不安で、男性自身も「男らしさの呪縛」を解除できずにいます。今の20代前半であれば、本質的にのほほんとしたところがあって、「男らしさの呪縛」にとらわれる度合いは、幾分、低いかもしれません。一方、30~40代は大変そうですね。昔のイメージの「強い男性像」と、20代に見られる新しい男性像の間にいて、どっちつかずになっています。
–精神的に追い込まれやすいのは、どのようなタイプの男性ですか?
Tomy氏 まずは完璧を目指しすぎる男性ですね。上昇志向があるのはいいのですが、自分でつくったルール通りに事が運ばなければ、すべてダメだと思ってしまいます。考え方が、少し極端なんですね。ほかには、独力ではい上がってきた成功者も、意外とメンタルの調子を崩しやすいです。苦労してきた分、他人からの批判に敏感で、ちょっとでも指摘されると、すぐにかっとなって大声を上げてしまう……。やがて周囲との間に溝が開いて、つらくなります。ほかにも、あがり症で先々のことを考えすぎて不安になるタイプや、ついついお酒で憂さ晴らしをしてしまうタイプなんかが要注意ですね。