「もはや『不祥事の東芝』と言ってもいいほど体質は変わっていない」――。
ある大手証券ストラテジストは、東芝の子会社で架空取引が発覚したことについてこう話す。
東芝は18日、連結子会社の東芝ITサービスが売上高200億円規模の架空取引を行っていたことを発表した。東芝は2015年に不正会計問題が発覚した影響で、東証2部に降格しており、早期の1部復帰を目指していた。そんな矢先の不祥事の発覚は、信頼回復には程遠い実態を露呈させた。
今回の東芝子会社の架空取引が証券業界関係者に一段と失望させたのは、東京証券取引所が昨年末に2部から1部への復帰の要件を緩和することを決め、いわば「援護射撃」を出していたかたちにもかかわらず、身から出たサビで台なしにしてしまったためだ。
東証の緩和策は、これまでのルールでは1部復帰には監査法人の適正意見がついた有価証券報告書が5年分必要となるところを2年分に短縮するように変更するというもの。東芝はすでに2年分の有報を提出しているため、すぐにでも1部への移行を申請できることになり、審査に通れば復帰できるようになる。そのため、この緩和策は「明らかに東芝への優遇策だ」と批判の対象となっていたのだ。
さらに、この東芝優遇には、首相官邸の力を背景とした経済産業省の東証への圧力があるとされており、「東証が安倍政権に忖度した」との見方も広がっていた。そういう上げ底された状況のなかでの「自爆」なだけに、東芝の体質への失望感が高まるのも無理はない。ある銀行系ストラテジストはこう話す。
「東芝の1部復帰を決めるのは東証ですが、正直『どこまで足を引っ張るんだ』と心象を非常に悪くしているでしょうね。不正会計や隠蔽体質が何も治っていないという企業をすぐに1部市場に復帰させたら、ガバナンスにうるさい昨今では東証への批判も避けられない。そうこうしているうちに東証改革での新市場区分の話も出てくる。早く1部復帰しないと新しい1部市場である『プライム市場』にも入れず、かつて日本企業を引っ張った大企業は見る影もなくなってしまいます。東証はどうするか頭を悩ませていると思いますよ」
東芝は2015年に不正会計が発覚して以降も米国原子力事業の巨額損失を隠していた「隠蔽体質」が批判されてきた。上場廃止にならないどころか、問題発覚からたった5年で日本企業のトップリーグたる1部市場に復帰できること自体、東証のモラルが問われる事態だ。今回の子会社の架空取引を受けて、東証がどのような対応をとるか、注目される。