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いずれ崩壊?セブン&アイやダイキンなど独裁企業に蔓延する「忖度病」

文=井上久男/ジャーナリスト
いずれ崩壊?セブン&アイやダイキンなど独裁企業に蔓延する「忖度病」の画像1セブン&アイホールディングス本社(「Wikipedia」より/Kentin)

 日本企業の労働生産性が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最下位であることは、あまり知られていない。国家財政が破綻しているギリシャやシエスタ(昼寝)が大好きなスペイン以下なのだ。労働生産性とはGDPや売上などのアウトプットを労働時間で割って算出したデータだが、日本の労働生産性が低いのは、経済成長していないのに労働時間だけが長くなっているからだ。

 この労働生産性の指標は重要だ。特に日本の場合、今後、少子高齢化が加速化して労働力不足に陥ると予測されているなか、国内では少ない労働力でいかにパフォーマンスを上げていくかが業績を上げていくためのカギを握るからだ。

 労働生産性低下の元凶は2つある。ひとつが「忖度(そんたく)病」で、もうひとつが「コンプライアンス病」だ。この2つの病は密接に絡み合っており、病根を絶たない限り、日本の労働生産性は向上しないだろう。

秘書を後継社長に据える異常さ

 忖度病とは、経営トップの意向を過度に慮るあまり、悪いとわかっていても悪事にまで手を染めてしまうことだ。たとえば、東芝の粉飾決算の原因のひとつは、西田厚聡氏が社長時代に「チャレンジ」と称して到底実現できそうにない販売計画を掲げたことだと見られている。西田氏は具体的な指示をしたわけではなく、配下に忖度させ、結果としてそれが粉飾につながった。

 西田氏といえば、一時は経済団体連合会長の有力候補だった。「名経営者」と持てはやされるトップがいたり、株式を保有するオーナーでもないのにひとりの人間が経営トップとして長期間君臨したりしている会社ほど「忖度病」に侵されている。今は業績が良くても、いつか馬脚が現れる。損失隠しを行って2012年に逮捕されたオリンパスの元社長・会長の菊川剛氏はその象徴的なひとりだ。社内で強権政治を敷き、周囲をイエスマンで固めていた。

 空調大手のダイキン工業も「忖度病」に侵されている。同社の井上礼之会長は1994年に社長就任以来、20年以上経営トップに居座っている。井上氏は外面は柔和で財界やマスコミ受けは良くても、好き嫌いが激しく、周囲をイエスマンで固めている。役員用トイレの改修工事でドアのノブを取り換えるのにも、井上氏が気に入りそうなデザインを選ぶそうだ。

 井上氏は後任社長に長年自分に仕えてもっとも忖度が得意な取締役秘書室長の十河政則氏を抜擢した。秘書室長がそのまま社長に昇格すること自体が非常に珍しい人事だ。しかも十河氏は秘書・人事・総務の経験しかなく、営業や生産などの現場をほとんど知らない。これもメーカーの社長としては珍しいキャリアだ。

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)も「忖度病」が蔓延している。鈴木敏文会長は40年近く経営トップの職にあり、氏の意向をいかに忖度できるかが同社での出世を左右する。

 ダイキン、セブン&アイHDともに業績は絶好調で、株式市場や世間での評価は高く、井上氏と鈴木氏は「名経営者」と持ち上げられる。両氏は、オーナーでもないのに息子を会社に入れていることも共通点だ。「忖度病」は企業社会だけではない。政治でも安倍晋三首相の意向を忖度できる人ほど重用されている。

 権力を握る者にとって「忖度」されることは好都合だ。自分が具体的に指示するわけではないので、「証拠」が残らなくてすむ。もし、不祥事が起これば、「私は何も指示していない。部下が勝手にやったこと」として責任を回避して逃げ切ることもできる。政治資金などで不祥事を起こした政治家が秘書に責任を押し付けることと似ている。

「忖度病」が蔓延する背景には、「空気を読む」ことを大切にしすぎるあまり、異質な意見を言う者を退けていることもある。この結果、組織はどんどん均質化していき、独裁者が間違った方向に走っても、誰も止められなくなる。

「反社」ではないという証明書を出せ?

 次は「コンプライアンス病」についてだ。多くの企業が内部監査などを強化するなどコンプライアンス対応に力を入れているが、不祥事はなくならない。それは、マニュアルで決められた形だけのチェックしかしていないからだ。常識的に正しいと判断して行動を起こそうとしても、マニュアルでいちいちチェックするので、余計な仕事が増える。そしてマニュアルで決められていない事態が起こると、思考停止に陥ってしまう。

 筆者もこんな経験がある。ある大企業でイベントの司会を頼まれて、後日その請求書を送付したら、経理の担当者から「我が社はコンプライアンスが厳しいので、個人事業主の井上さんの場合、反社会勢力ではない証明書を添付してほしい」と言われた。大企業は支払先が個人事業主であることを嫌う傾向にある。それは、総会屋や暴力団にお金を払っていると思われる可能性があるからだそうだ。

「そんな証明書あるのですか」と筆者が聞くと、「免許証のコピーを添付してください」と言われた。おそらく、天下っている警察OBなどを使って免許証の番号から反社会勢力か否かを割り出すのであろう。そして、その担当者は「井上さんが法人を持っていればすぐに振り込めます」と言った。

 筆者に言わせれば、法人登記していても、いわゆる「フロント企業」もあるわけで、登記されている企業だから支払うというのもおかしなことだ。そもそも、筆者が反社会勢力か否かを確認するのであれば、そんな作業は仕事をする前にしておくべきで、仕事の後に「証明書出してくれ」という話ではない。経理担当者のアリバイづくり的な仕事であろう。よく考えると、この件で電話や書類のやり取りが増えたが、生産性の高い仕事とはいえない。

 コンプライアンス強化によって、ヌードが掲載されている週刊誌やスポーツ新聞まで会社に持ち込み禁止の通達が出ている会社も増えていると聞くから、驚くばかりである。過度なコンプライアンス対応によって、企業から「自由度」がなくなり、それが商品開発面などにおける斬新な発想を奪っている面も否定できない。こうしたことはおかしいと気づいて組織内で声を出す人材は異端者と見なされ、いずれ組織から追い出されることになる。

 企業はよくダイバーシティ強化を謳う。この狙いは多様な価値観を受け入れることで、組織を生き生きとさせ、環境の変化が激しい時代に柔軟に対応していこうというものである。しかし、「忖度病」と「コンプライアンス病」の蔓延で、組織は生き生きどころか活力が低下し、自らアイデアを出して動く社員が減っている。非創造的な仕事も増え、内心では「やってられないぜ」と思いながら仕事をしており、こうした環境下ではパフォーマンスが上がるはずもない。
(文=井上久男/ジャーナリスト)

井上久男/ジャーナリスト

井上久男/ジャーナリスト

1964年生まれ。88年九州大卒業後、大手電機メーカーに入社。 92年に朝日新聞社に移り、経済記者として主に自動車や電機を担当。 2004年、朝日新聞を退社し、2005年、大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了。現在はフリーの経済ジャーナリストとして自動車産業を中心とした企業取材のほか、経済安全保障の取材に力を入れている。 主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)、『自動車会社が消える日』(同)、『メイド イン ジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『中国発見えない侵略!サイバースパイが日本を破壊する』(ビジネス社)など。

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