半導体と原子力発電頼みの東芝の事業計画は、もはや計画というより願望に近い。そもそも、半導体と原発の2本柱には大きなリスクがある。V字回復を目指し、2017年3月期決算で営業利益1200億円(16年3月期は4300億円の赤字の見込み)、最終利益400億円(同7100億円の赤字の見込み)と黒字転換を図るが、達成は困難との見方が強い。
経営資源を記憶用半導体と原発などのエネルギー事業に集中するというのもリスクが高い。米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)には、減損リスクがくすぶっている。WHを含む原子力事業の17年3月期の売上高は前期比20%増の8700億円を目標にしている。「新興国のエネルギー需要は拡大している」との読みに基づいた判断だ。インドでWHの最新鋭原子炉6基の受注を見込んでいる。原発の受注目標は30年度までに世界で45基。これはあくまで希望にすぎない。事実、11年の東京電力福島第一原発事故以降、新規受注はゼロである。受注目標は絵に描いた餅となる懸念がつきまとう。
一方、半導体ではNAND型フラッシュメモリーに3年間で8600億円を投じる。三重県四日市工場で製造棟を新設するほか、次世代メモリーへの設備切り替え投資に資金を充当する。
主力のフラッシュメモリー事業は市場の変化が激しい。シェアを維持するために3年間で研究開発投資を含めて巨額投資をするが、韓国サムスン電子との競争に勝てるという保証はない。半導体は投資を継続しないとライバルとの差がつく「チキンレース」の事業とされる。企業体力が落ちている東芝にとって巨額投資を続ける負担は、今まで以上に重荷になる。
東芝、富士通、VAIOによるパソコン事業の統合は見通しが立たない。統合交渉は「17年4~6月期までに決着をつけたい」(室町正志・東芝社長)としているが、VAIOは依然として3社統合に前向きではない。
社内カンパニーは7つから4つに再編成。半導体、エネルギー、インフラ、ICT(情報通信技術)関連で、その中でも半導体、エネルギー(原発)、社会インフラを3本柱としていく。
東芝の先行きは依然として不透明
グループ人員は14年度比16%減の18万3000人で、17年3月期の連結人員は15年3月期に比べて3万4000人減る。売上高も1兆7000億円減り、5兆円割れの4兆9000億円になる。直近のピークである15年3月期に比べて3割減である。17年4月入社の新卒の採用は中止する。