株式市場では一時、金庫を手がける銘柄が買われた。耐火金庫を製造しているジャスダック上場の日本アイ・エス・ケイの株価は、2月の終値から3月7日の344円まで44%高くなった。ただ、その後は200円台に逆戻りし、3月25日の終値は291円だった。それでも、昨年8月25日につけた昨年来安値(100円)と比較すると3倍近い水準だ。日銀のマイナス金利施行後、タンス預金が増えるという見方が増え、思惑買いにつながった。
金庫はもともと、金融機関やオフィスで重要書類を保管するための業務用が大半だった。経済産業省の「生産動態統計調査 繊維・生活用品統計編」によると、ここ10年間で耐火金庫の出荷台数は05年の23.1万台から14年は11.1万台へと半減していた。
それが15年10月以降は単月ベースで、前年同月比2割増の勢いで増加している。マイナンバーとマイナス金利のダブル特需である。
定期預金代わりに百貨店の「友の会」を利用
また、百貨店各社の「友の会」が主婦に人気である。毎月一定額を積み立てると、1年後に1カ月分が上乗せされるという仕組みを取っている百貨店が多い。
友の会は顧客を囲い込むために古くからあったが、14年4月の消費増税後、積み立てる人が増えた。さらにマイナス金利時代になり、利回りの高さが俄然注目された。
毎月1万円を積み立てて12カ月を満期とした場合、1万円を上乗せした13万円の買い物ができる。単純計算で年率8.3%と、限りなくゼロ金利に近くなった定期預金よりはるかに有利だ。
高島屋友の会「ローズサークル」(会員数48万人)は、月3万円や5万円といった高額の積み立てが増えている。15年3~8月中間決算によると、3万円を積み立てる新規の口数は前期比81%増、5万円は94%増と倍増に近い。
大丸松坂屋百貨店の「JOY CLASS」は2月の新規入会数が2倍に増えた。小田急百貨店の「レディスクラブ」も2倍増の勢いだという。
各百貨店は「百貨店をあまり利用しない若者や男性客にも友の会の認知度が広がれば、百貨店全体の売り上げも増える」と取らぬ狸の皮算用をしている。
今年、友の会の積み立ては爆発的に増えることが確実視されている。だが、友の会はあくまで買い物で得をするためのマネー商品。当該百貨店で使える商品券や買い物カードがもらえるだけで、現金が戻るわけではない。定期預金代わりに百貨店の積み立てを活用する動きは、マイナス金利狂騒曲の一コマにすぎない。