マイナス金利は、信用金庫にとってのビジネスチャンスとなった。メガバンクは預金金利を限りなくゼロに近づけて、これ以上預金が膨らまないように厳重にガードしているからだ。
銀行間では預金の押しつけ合いが激しくなっている。大手企業などの普通預金に口座手数料を導入し、次は個人の預金にも適用するつもりだ。
一方で信用金庫は、預金金利の引き上げに動く。西武信用金庫は3月から定期預金の金利を引き上げた。3、4年物は店頭金利に0.01ポイント、5年物は0.02ポイント上乗せした。
西武信金は、そのものズバリ「マイナス金利対応融資」も始めた。日本銀行のマイナス金利政策に合わせ、中小企業に従来の金利の半分程度の低金利で融資するというものだ。マイナス金利の適用を受ける日銀への任意の預け金300億円を引き出して、これを融資に振り向ける。西武信金は預金と融資の両面で優遇策を採っている。
全国の信用金庫にも預金金利引き上げの動きが広がってきた。信金が高い金利(利息)をつけられるのには、こんなカラクリがあるからだ。信金の上部組織である信金中央金庫に預金すれば、利息をもらえるという安心感がある。
信金中金は預金金利を公表していないが、「日銀の当座預金にこれまでついていた0.1%を上回っている」(関係筋)という。信金はマイナス金利分を部分的にカバーできるサイフを持っていることになる。
全国にある260の信金で預金金利を引き上げる動きが広がれば、個人や中小企業の預金が銀行から流出する可能性が高い。大手信金の中には、地方銀行(特に第二地銀)より経営規模が大きいところもかなりある。第二地銀の顧客を奪い取る、またとないチャンスなのだ。
タンス預金用に金庫を購入
マイナス金利が導入されてから売れ行きが伸びているものがある。それは、個人向け金庫だ。銀行に預金していては金利や手数料を取られるとの懸念から、タンス預金する人が増えている。
マイナンバーの通知カードが配布され始めた2015年10月から、カードの保管場所として個人向け金庫の需要が高まり、出荷が倍増した。さらにマイナス金利の導入が発表されてから、売れ行きに拍車がかかった。
「ホームセンターの売れ筋は重さ50キログラムの金庫で、価格は2万円程度」(流通アナリスト)だという。
金庫の国内シェア1位のメーカーはエーコーで、同社は「個人向けのものがこれほど売れるとは予想していなかった」と語っている。