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廃棄カツも廃棄ローストビーフも、たまたま食中毒が発生していないが、表面には出ていない家庭内食中毒は発生していたかもしれない。日本の場合、複数の人が同じ店で同じものを食べて同じ種類の食中毒にならない限り、店や原因食材が特定されることはない。もちろん、あとから「あの店で食べた○○で食中毒になった」と言っても、証明できないので食中毒として集計されることはない。実際の食中毒は、統計の数字よりはるかに多いといわれている。
廃棄カツは、いったん解凍されているなど保管状態に問題があるので食中毒の心配もあるうえ、廃棄理由が異物混入ゆえに異物を食べてしまう危険性まであった。廃棄ローストビーフの場合、赤ワイン煮込みは中心部まで加熱が十分されたかもしれないが、サンドイッチや牛ロースト丼は十分加熱されていない可能性がある。
廃棄カツも廃棄ローストビーフも、幸いにも異物摂取や食中毒が発生していないにすぎない。09年、ステーキチェーン店「ペッパーランチ」では、成型肉で31人の腸管出血性大腸菌O157食中毒患者が発生している。
機能しない行政
それにしても、事業者のモラルの欠如がはなはだしいのには驚かされる。壱番屋の廃棄物を食品として横流ししたダイコー、行政機関に対し廃棄を約束したのに使用した丹波ワイン、どちらも「捨てるより売ったほうが儲かる」という食の安全より利益を優先した行為だ。しかも、どちらも健康被害を与えていないということで、重大な法律違反に問われそうもない。
国や地方行政機関はなめられたものだ。ダイコーには愛知県が何度も立ち入り調査に入っているが、隠し倉庫の存在さえ見つけることはできなかった。丹波ワインは、保健所に廃棄すると報告しているのに、簡単に約束を反故にしている。
どちらも、食の安全を守るための法律の甘さと行政の力不足が引き起こした事件である。それにもかかわらず、国や行政から危機感は伝わってこない。このままでは、こうした事件の再発は防ぐことができないだろう。「廃棄食品を食品として流通させてはいけない」という法律をつくるべきだ。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)
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