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そう考えてくると、今後の経済を議論する上では、リーマンショック並みの危機のようなリスクを念頭に置くことが必要だ。足許の世界経済は、マイナス金利政策など過剰なまでの金融緩和によって債券や株式の価格を支え、需要の低迷などを糊塗している状況に等しい。そして、さらに景気が悪化した場合、先進国での金融緩和の余地は極めて小さい。財政状況を考えると、思い切った財政出動も容易ではない。世界経済の下方リスクは着実に拡大していると考えられる。
それだけに、主要国はいち早く政策面での協調を進め、通貨安競争の回避や財政出動を通した構造改革への合意を形成すべきだ。その点で、今回の伊勢志摩サミットは重要だった。各国の政治動向をみると、協調よりも離反や内向き志向が目立つ。英国はEUからの離脱(Brexit、ブレグジット)を国民に問おうとしている。米国では共和党の大統領候補として、誰もが予想していなかったドナルド・トランプ氏の躍進が目立つ。それは、米国が米国のことだけを考えればよいという世論を反映している。サミットでのわが国の主張も、自国の都合しか考えていないことの表れと言える。
主要国が内向き志向を強めるなか、世界的なレベルでリスクが顕在化した場合に有効な対策は打てるのだろうか。むしろ、ある国の金融緩和を他国が批判する状況が出現しやすいように思われる。それだけに、ひとたび市場に混乱が生じれば、これまで以上のマグニチュードで懸念が高まる可能性があるだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)
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